コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

ガレットの日2-2

「明日のランチではガレットを作ること。以前にコンソメスープを販売したのは記憶に新しいと思います。忘れたとは言わせない」彼女は通路の突き当たり、トイレまで歩き、振り返った。「一品でも私たちに断りなくフランス料理を販売したのだから、こちらの要求は受け入れていただきます。反論は一切、受け付けません」

 不遜な要求に小川が噛み付いた。「フランス料理は他の店でも出してますよね?例えば、それこそガレットはかっちりとしたフランス料理を看板に掲げるお店じゃなくっても、見かけます」

「規則の遵守が徹底されない店では一切の使用はもちろん、フランス産の食材使用までを禁止。もう一度、思い当たるお店に行ってごらんさいな。必ずメニューから排除されているわ」仰け反った姿勢の真柴に店長はしばし眺めた。傲慢な思考を他の人間に押し付け、認めさせる。"同調"を促すのは一体どういった仕組みなのか、店長は考えていた。彼女の外面的な美貌、動物的な本能による情意の高まりとは別種の視線である。

 小川のおしゃべりが存分に活用される、店長は黙って二人のやり取りの傍観に徹した。真柴を護衛する従者の田所も、店長の同様のスタンスで時計が針を刻むのを待つ。

「推進だか普及だか、あなたに何の権限があって、うちの店の明日のメニューを決められるっていうのよ?」

「各国の伝統料理、フランス、中華、ギリシャ、トルコ、メキシコ、イタリア料理などは文化の継承に正当な信頼を勝ち得た店でのみ、お客への提供を認可し、その認可は各国の協会が取り仕切る。私たちがこの国のフランス料理について正当性を判断する。正式にフランス政府から許認可権を授与されたまさしく正当な権利継承者。その協会の副会長がこの私であある」

「あの、あなたの自慢はもう結構です、お腹一杯。年上の自慢ってかわいそうだから、はっきり言ってあげました」手を副えて小川がそっと耳打ちをするように言ったのけた。

「あなただっていずれ私の歳になるんだから、自分だけ歳を取らない、その年代の幻想よね」肩をすくめる。ダンスの一動作に思える、瞬間的な上下動だ。ダンパーでも付いているみたいに吸収された。

「まだ十代ですもん」

「まだは今に変わって、それから昔、そして……」口の動きに適した言葉が留まった。「話がずいぶん逸れちゃいましたね」