コンテナガレージ

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ガレットの日2-3

「副会長、本題に入っては?」田所が助言する。

「そうね、店長さんよね、あなた。オーナーも兼任してる、間違いありませんね?」話が振られた、息を潜める店長はひっそりと顎を引いた。これでも合図は送ったつもり。

「翌日のメニューは監視させますよ、抗うような真似は考えるだけ無駄に思えるぐらいの人員、監視員を送り込みます。込み合うのでしょう、お店は?」真柴は覗き込む、カウンターの重なる皿に首が載っている錯覚。

「メニューの変更は途中で行いません」店長は続けた。「監視は今回限りですね。しかし、監視の事前通達とはこちらにフランス料理を是が非でも提供させたい、という意図に思えるのは私だけでしょうか?単なる監視だけならば、黙ってそれこそしっぽを掴んでしまえば、監視の威光が高まる」

 彼女は鼻先に軽く握った右手を当てて、鼻で笑った。「……前回の無断使用をお忘れですか?」

「ハンバーグを明日のランチで提供したら、私は犯罪者ですか?」

「いいえ、日本国内でフランス料理の不正使用を大々的に報告。あらゆるメディアを通じてあなたの店に国民が監視員となって訪れるの」彼女はふふふと笑いを堪えるように漏らした。

「いいですよ」店長はあっさり応えた。意外な回答と速度、真柴ルイは目を見開く。

「強がりはよしてってば。フランス料理よ、世界の美食家が絶賛する料理よ。あなただって一度は食べことがあるでしょう、お客への提供が止まるのよ。あの繊細で豪勢で華やかな彩られた料理が順番に運ばれ、噛み砕いて舌をやさしく、それときには厳しく、激しく刺激を与えるのを諦められるっていうの?」

 店長はためらいがちに言葉を発した。節目がち。「……ガレットは作りますよ、不本意ですが。あなたたちは帰りそうにもありませんし、このままではディナーの開店まであなた方を通路に立たせておくことになる。それは避けたい。あまりにも稚拙な、理由ですけど、あなたの要求にも応えて私も譲歩。これで満足していただけるでしょう。これ以上の詮索を望むのならば、こちらとしても店内の滞在はお客でしか認められない。話しかけることは、カウンターからでも可能です、私の返答を期待しなければ。応える義務はありません、店のサービスはお客との対話、会話、接触、出会いではまったくないと、私は考えてる」はっきりと伝えたつもりだ、店長はホールにかかる壁時計を見た。テーブルに座る国見が側頭部を手のひらで包む、帳簿を睨みつける、在庫の数が予測や前月を越えていたのか、あるいは今月の採算は取れていなかったのだろうか、店長は二人の侵入者を見えていないように忘れた。