コンテナガレージ

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非連続性3-5

 熊田がタバコが三本目を吸い始めたその時に、バスが暗闇から登場した。種田は時計を見る、ほぼ時間通りの到着だ。

 手順は次のとおり。目視で車内を確認。乗客が乗っていたら種田がすかさず乗り込み、乗客に接触を試みる。熊田は車で後をその追いかける。

 種田が出発地点からバスへ乗り込まないのは熊田の考えらしいが、詳細は教えてくれなかった。

 バスに人の上半身、種田は乗客の顔を視界に捉えた。

 足を踏み出した、滑る路面は強く踏み込まない、雪上で滑らかに足を先へ進める大原則。

 種田はバス停止の数秒後にステップに足をかけ、乗り込んだ。

 ちらりと右手に座る女子学生を見た。目が合う。

 バスが動き出して、種田は学生の通路を挟んだ隣の席に腰を下した。

 無駄な緊迫感を排除、種田はすぐに彼女を見つめて声をかけた。

「O署の種田という者です」学生は細長い丸い顔を拡大させる作用の、首に巻いた大仰なマフラーに顔をうずめて、上体も若干隣の席に引き気味に種田へ引きつった口元を向ける。話を進めることで怪しさは解消される、種田は言葉を続けた。

「いつもこのバスを利用しますか?」種田特有の年下に対しての丁寧な言葉遣いは、反対に恐怖の印象を与えてしまう。種田は礼儀正しさを露見しているわけではなく、人への興味の無さから派生した、人選による態度の切り替えを嫌ったために、だれかれともなく一貫した態度を取り続けているのだ。

「……は、いいえ、今日がたまたまです」言いかけた、ためらいを種田は見逃さない。

「学生にしてはずいぶんと遅い帰宅、特別な用事でもあったのですか?」

「部活です、いつもこのぐらいの時間に帰るのは、普通です」肩にかけるスクールバッグのほかに持ち物は所持していない。

「どこから乗りました?」

「図書館前」

「図書館?」種田は脳内でさっと地図を広げた。だが、開いたのは遺留品と目されたガイドブックのページだった。もちろん、図書館の表示は見当たらない。現実の地図を頭に入れていない種田である。

「公民館の隣です、わかります?公民館」学生の音程が安定してきた。公民館は山遂セナを送り届けた場所である、映像を再送する、玄関口の外から見えるように休刊日の張り紙が見えた。