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千変万化1-6

「熊田さん、時間が」鈴木が催促。

「確証は持てませんが、マスコミにはあなたの名前までは漏れないでしょう」熊田の言葉をもって、公民館を後にした。

 熊田たち刑事にアイラも引き続き同行する。

「次は?」助手席の種田が尋ねた。

「バス会社だ」

「熊田さん、電源を借りてもいいですか?」鈴木の声が運転席の後ろから聞こえる。

「もしかして、まだ撮影していたのか?」

「約束は約束ですからね」

「切れ」

「聞こえていますよ」端末からくぐもった声が届いた。I西署の柏木という刑事の声である。

「次はバス会社へ行きますので、ご心配なく」

「容疑者を連れて、どこへ行かれるつもりですか?」

「これから署で話を聞きます。帰り道にバス会社で気になることを聞くために立ち寄るだけですから、それでは」熊田は鈴木の端末を取り上げて、赤信号の停止と会話を断ち切るタイミングを見計らい、自由になった両手で撮影を切った。

「いいんですか、また問題になりますよ」

「責任はお前にまで影響しない、気にするな」

「私のためですか?」後部座席でアイラが言う。

「いいえ、事実のためです」熊田の代わりに種田が返答。臨港沿いを逸れて、車はバス会社に急行した。