コンテナガレージ

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非連続性6-1

「確保した土地の広さって具体的にどのぐらい?」

「約2平方キロメートル」

 すっかり日が暮れた午後六時ごろ、大まかに建設候補地を巡ったアイラは公民館の駐車場へ車を乗り入れる寸前、運転手の山遂に尋ねた。彼女はその回答をマンションのエントランスを思わせる公民館のロビーにて、後ろ手をぐるぐる回し、資料を待ちつつ思い返していた。

 ガイドブックの掲載地図は見事だと確信を持っていえる。私のアイディアを元にして作られたのだから、私が拒否するはずはない。見事な造形物を見せられた後というのは、体の交わりや内省的な映画を鑑賞したみたいにひどく体と精神が離れてしまうような現象とそっくり。ああ、いつまでこの陶酔感は続くのだろうか、そう、冷たい息を吸い込む。

 メモリーカードに収めた資料を受け取り、彼に車で最寄り駅まで送ってもらった。

 駅はバス乗り場がずらりと並ぶ、細かに行き先表示が書かれ、乗客は屋根にあぶれてもバスを待つ列に並ぶ。止んでいる間の瞬間的な光景だろうか。

 バス乗り場と顔を突き合わせるように巨大な駐輪場。内部を眺めるための前面に張られた窓が見える。盗難防止が目的だろう。しかし、冬まで自転車に乗りたいと思うのは、時間の節約よりも歩くことの意義をないがしろにしている。つまり、駅までのあるいは駅を出た時間はすべて移動になり下がる。その節約が体力の回復や家族との時間、趣味を愉しむ時間に回されているのかどうは疑わしい。

 アイラは電車で移動、S駅からは徒歩を選び、人通りの多いビル街を歩き、マンションへ帰宅した。シャワーで体の汚れを落としたら、すぐに食事を摂った。栄養のバランスを考えて作られた商品には目もくれず、アイラは階下のコンビニでサンドイッチとコーヒー豆を購入、シャワーを浴びる前に備え付けのキッチン用品のコーヒーメーカーにセットしていたので、そろそろ出来上がっているはずだ。

 食器は備え付け。戸棚に手を伸ばし、掴んだホーローのマグカップに体を温める作用の刺激を混ぜた苦い液体を注ぎ、窓際のソファに腰を落ち着けた。邪魔な長い髪をハンドタオルでまとめたこっけいな姿が、映し鏡のような窓に浮き出る。あの子は髪が短かった、まるで昔の私。アイラは熱さをよける風量をコーヒーに吹き付ける。昔は、長い髪が嫌いだった。それに命を懸けている同級生を見下していた。外見よりも内面を見通すべきだと、そうか、そう思っていたんだっけ。アイラはうなずく。正面の黒いテレビ画面でうっすら私が動いた。双子というレッテルから逃れたかった気持ちはわずかな量にすぎなかった、それよりも二人を見比べることにしか頭が回らない安穏さに嫌気が差していた気分が再燃した。胸を抑えて心の渦を落ち着かせる。