コンテナガレージ

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抑え方と取られ方1-9

 そして従業員が各自の仕事に取り掛かる。

 ランチメニューの一つはハンバーガーに決めていたので、昨夜に直接、アーケード街のパン屋、ブーランルージュにハンバーガーのパンズを注文していた、これを小川に店まで受け取るようにお願いする。館山には、裏口に配達されたひき肉を半解凍の状態で味付けを施して、混ぜてもらう。国見は、店の清掃を行う。

 ハンバーガーはどのメニューと組み合わせても数では同等か、圧倒的な勝利を収める。しかし、夏場や秋の屋外でも食べられる気候での結果である。冬季間のデータはまだ観測していない。また、雪が降ってからはテイクアウトもまだ数えるほどしか行っていない、そのため店内での飲食の要望も計測する必要があった。

 店主は出窓から外を覗く、明るく曇りにかげる昨日とは別人。気温が上がるだろう。外を出歩く人も多いはずだ。もう一品も片手で食べられるメニューにしよう、店主は思いつく。厨房の吊り戸棚、冷蔵庫を物色、次に倉庫に足を延ばす。

 館山は、規則的な粘着質を奏でるひき肉を音が出始めてから粘りが出る五分を目安に、かき混ぜていた。

 倉庫の棚、右の壁際の奥に押し込まれた見慣れない紙袋が見つかる。外見は、小麦粉などの粉類と包装は似ている。しかし、書かれた文字を見ても読み取れない。穀物のイラストが文字の両脇、外側に開くようにプリント。おそらく、とうもろこしだろう。店主は、それを持って厨房に戻ると、計量器で粉と加えた水の分量をノートに書いていく。

 小川がパン屋から戻り、興味津々で店主の手技に見入る。具材をはさむために、中に切れ目を入れるよう小川に指示。彼女は仕事を与えないと、こちらの手元を見つめ、技を盗もうとするのだ。

 館山の混ぜるひき肉を四分の一もらい、別のボールに移す。そこへ鶏ひき肉を混ぜ合わせる。脂身が多いと、水で溶いたとうもろこしの粉に包むには、油があふれ出て不向きだ。外側を包む穀物の違いにより多少淡白に仕上がると予測。とうもろこしの甘みを感じる点を考慮に入れた。まだ、どうなるかは不明。だから、すぐに試すのだ。実践だから身につき、技法となる。

 今日は副菜を止める。パンは正方形で一つの角を切った袋状の紙に包んでお客に差し出す。大人数で食べる、多数の注文の場合には、六つが収まるプラスチック容器に紙で包んだ状態で、さらにビニール袋にも入れる。手渡す時には、水平を保つようにと声をかける。縦に袋を持てば、紙で受け止めた肉汁の行き先を保障できない。

 とうもろこしの粉を溶いてフライパンで焼き色をつけるぐらい加減で引き上げて、食べてみた。予測の範囲内、ほんのり甘みが広がるが、しつこさはすぐに消える。野菜でもなくフルーツでもない甘さに揺れるライン。持ち帰りで食べる時間を考慮に入れると、火が通るギリギリで引き上げ、具材を包むとしよう。外気温に晒されてまた、室温に戻される過酷な状況下を潜り抜けて、やっと口に運ばれるのだから。

 中の具材も熱を利用しようか。店主は、香味野菜、根菜類を取り出す。またまた業者が持ってきた、セリが使われずに残っていたので、具材に混ぜることにしよう。味付けは薄味にサルサソースを加える。辛い食べ物を求めるお客の集客とは一線を引きたいので、辛味は抑える。