コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

静謐なダークホース 1-3

「国見さんは、どう?」

「ピザは列に並んだお客が黒板を見て、必ず声に出していたので……ああ、もしかして」国見は話のなかで思い出したらしい、首がすぼみ、それから勢いよく定位置に戻る。

「なに?」

「声に出していたということは、少なくとも二人以上で並んでいたのではと思ったのです」

「なるほどね」

「二人だけで完結しないで」小麦論者の彼女が訴える。

「つまり、国見さんに届いた声はお客同士の会話。一人がピザを頼めば、もう一人は必然的に他のメニューを頼む確率が高い。ピザを頼んだ組もあったでしょう。しかし、ピザは注文数に対応しきれずに、提供の速度が極端に落ちた、ここから得られる解はどちらかがピザを頼み、どちらかが他の三品から選ぶ、そういった流れが妥当。列に並ぶのです、購入後に戻る先も同じ場所でしょう」

「本来の結果は小麦の圧倒的な勝利だったのね。僅差は見せかけ。その方が期待感が高まる、結局小麦か勝つのに」女性は笑いをこらえてかみ締める。

「とうもろこしの可能性が垣間見えたのは、私どもにはかなりの収穫」落ち着き払った灰賀が言う。「宣伝費の支払いはゼロ、しかもこちらのランチに一時であってもラインナップに加えていただいた、これを満足といわずなんと言いましょうか」

「店長さん」同意を求める語尾の上がり。有美野が尋ねる。「お米の需要が今後はっきりとお客さんから示される形、何度もひっきりなしにライスの提供を要求される事態が訪れた場合の対処は、おわかりですね?」

「お客さんが安さを求めて来店されるようなら、ライスは提供しませんし、あなたからも白米は購入しない」

「安さが売りの一つ、と私は解釈してます。ここへ通った私の意見です」

「一定の価格設定は、もちろんお客さんの集客利用のためである。否定はしない。お客の需要に合わせたランチの提供は私が心がけた法則ではあるが、特殊なルートに頼る提供は行わないでしょう」

「利益を簡単にこれまでの販売で、単純な作業で上げられるのよ。わかっている?」

「この方は特殊ですよ」灰賀がつぶやく。

「黙ってて。ねえ、私がお金を出すのよ、この店にはライスが必要なのよ」

「あなたにとって、ですよね?」

「同じだわ」