コンテナガレージ

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静謐なダークホース 2-4

「あの人たち並んでますよ」見開いた瞳で小川が屋外の怪しげな二人の最新情報を伝えながらも、数箇所黒い焦げ目がついた長方形、紙に包まれたピザを容器に詰める。

 数十人分を持って小川が外に運ぶ。多少サイズが小ぶりなために、お客は二つ以上の注文が多い。第三陣をオーブンに投下、火を入れる。釜のほうが一度に焼ける枚数が多く、オーブンには二回に分けた手間が要求される。オーブンで焼いても味はそれほど変わらないだろう、現に僕を含む従業員が食べ比べても、三つに一つは味を見極められなかった。

 しかし、お客の味は釜で焼かれたという、事実がおいしさをまとう。だから、最後の仕上げは釜に入れて、短時間でもお客の視界に、取り出す様子を見せる。

 小麦の摂取によるアレルギーの症例は大よそ出尽くした。死を招く恐れのある遺伝子とそれに類する呼吸不全や心肺の機能低下を引き起こす身体的傾向に、発症前の身体異常は特定の地域、主に小麦生産地の農家に症例発症による死者が固まる、

 生活と家族への被害を最小に抑える迅速な働きかけに応じた大学と小麦生産企業の共同研究が、過度なアレルギー症状を引き起こす遺伝子の発見に成功したのが、先月の終わり、最終週であった。それまでのピザは一定数の注文を記録していたが、発表前は現在の半分ほどの出方。安心を得た消費者は、アレルギーの発症が子供に多く見られることを知り、また国が定めた医療機関の無料検査及び、遺伝子解析の簡易キット(口内粘膜の採取)の無料受診が可能となり、小麦への不信感は払拭されて、また、いやより一層の加熱ぶりが窺えた。

 店主は、オーブンに生地を投入するとすぐに生地をこね始めた。今日は消費ペースが速い。小川が容器の水平を保ってドアを開ける。

「店長にです」四つの包み。大きさと色も違う。唯一の共通点は、リボンが結ばれている。従わなくては生きられない習慣だろうか。自分に送られた意味を、店主は首を捻って見つめ、探る。

 昔、今日の日付はいつも、いいや、ある時期から風邪を引いて学校は休んだ。それでも尋ねてくる者がいる、当時はまだ家庭訪問なる生徒宅に主に母親を尋ねる個人面談のような一種の習慣が行われ、また近隣に住むクラスメイトは、教師に頼まれたか、自分から買って出たのか、(おそらくは前者であろうが、僕の場合は後者の場合も予見された)休んだ者の自宅にその日の配布物が送り届けられるシステムがあった。部屋でじっと天井を見つめた。本当に、その日は具合が悪くなるのだから、おもしろく、精神と肉体との関係性についてこの時期から考察を深めていた、と思い出す。下校時間に家を訪ねるのは決まってクラスの女子である。それも必ず二人だった。母親は、熱の下がった様子に、買い物に出かける家には一人っきりの状態も毎年繰り返された。あまりにも、発言は似通っていて、前年度の台詞を誰かが教えていると、疑ったこともある。逃げるように配布物やコピーされたノートとともにいくつかの目の前の包装紙に似た四角い包みが渡された。