コンテナガレージ

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革新1-3

 橋は、川を渡し錆びた赤がさらに風化よってピンクにまで変色していた。私の記憶ではまだ橋は赤に近かったように思う。アランが男のお尻を追うようにずんずんと踵を返して私を引っ張る。男は私がついてこうよとも、自身の目的が果たされれば満足なんだろうと推察。

 再度足が濡れて、川を戻った。下水処理場には車が三台駐車されていて人の存在を主張し無人ではないんだと誇示してるようにも思えた。男は既に橋の真ん中辺りを通過。アランが求めるように上目遣いで甘えるように鳴く。

 仕方なく要求に従うか。私は橋に恐る恐る近づいて、川までの高さを確かめた。落ちたとしても最悪、骨を折る程度の怪我、水面までの高さは三メートルぐらい。渡りきった男のようには進めないが、アランの牽引力に任せてこの際、一気に意を決して橋に足を踏み入れた。ぐらりぐらり。無風なのに左右に揺れる、不穏な橋の軋みが音のない世界で拡張されているようだ。対岸までは、五メートルと目測、真ん中まで到達。アランはもっと先をと、振り返り懇願。分かったと、再び気を入れなおして慎重に残りを渡りきった。渡ってしまってから、帰りも同様の緊張を味わうのかと気が重くなった。

 川のせせらぎにとって代わり波の満引きがサウンドを牛耳っている。赤茶けた硬質な石を踏んで二本の線路を越えた。海は流れ着いたゴミで綺麗とは言い切れない光景であったけれど、騒々しいクラクションや薄っぺらい会話、せわしなく鳴り響くノイズよりは断然、安らげる居場所だ。

 準備運動をすませて男がサーフボードを持って海へと出撃していく。まるで戦い行くようだ。堤防に腰を掛けて私は波・空・人をなんともなしに観察するのであった。アランは迫る波を意識、近づきたいのだろうけど、犬の足には岩場の海岸は不向きだ。釘やガラスの破片、裂けたアルミ缶など怪我を追ってしまう恐れがあるためにリードを短く持ち、隣に座らせた。

 海面を注意深く観察すると、右手の一帯にもアザラシの頭のような黒い点が認められる。おそらく、サーファーたちだろう、あの辺りはちょうど駅近辺の海岸で車が列をなして通行を妨げるのだ。海水浴場ではないので借りられる駐車場といえば月極のみ、誰も出費を重ねてまで合法な措置を取ろうとはしない。自然に傾倒したがゆえにお金をかけないことあるいは自然との一体化に躍起になって決められた規則を守れないでいる。片足を思想を開放感だけを取り出そうとして現実社会にまた都合よく外れては道を正す。