コンテナガレージ

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革新2-2

 倉庫内の暗さにしぶしぶ立ち上がり、アルミ製の棚からランタン風の明かりを掴んで点灯させた。閉めきった室内だから、蛍光灯の紫外線に誘われる虫達に気をそがれることもない。しかし、さすが昼食を食べていなかった私の腹は待っていたかのように鳴り出したのでギターから一旦離れた。夕食後に再度取り組むつもり。

 食卓に着いて十分で食事が終了、母親がよく噛んで食べなさいというがCDを買ってきた私に配慮してか、それ以上は強く言わない。だってもう食べてしまったのだから、それは食べる前に言うべきなのだ。次の機会のために助言しているかもれないけれど、これまでこのペースで食べてきた、体は健康そのもの。

 一番風呂で汗を流して、倉庫に舞い戻った。父親はダイニングでビールを楽しみ、影流はお笑い番組を見ていた。母親は台所で片づけ。アランはまた食事がもらえると勘違いしたのか、彼専用の器を加えて私に哀願。諦めさせるには取り合わないこと、無理に諭しても言葉が通じないのだ、態度で示すしかない。犬が言葉を理解しているというのは、”人のわかる”と根本的に異なるように思う。犬は人の仕草や行動を見て判断を下してる。その動作の繰り返して体が覚えているだけだ。芸を教えて満足気な飼い主は従順な部下を持ちたいのだろうか。あなたを信頼しているのではなくて、そうしないと生きていけないからだと思う。犬は好きだ。しかし、必要以上に肩入れはしない。まして、家の中でなんて犬を飼わないし、シャンプーで洗いもしない。 

 なぜ犬について考えているんだろう。ぐびっとペットボトルの水を傾けて、深い深呼吸。私はそこで引っかかりを覚えた。なんだろうか。

 否定的な私は、物事を肯定しない。ほら今だって、打ち消しが語尾につく。焦点が見たくないものに合っていたから。そうか、そうだったのか。わざとらしく、ペットボトルの底を手のひらに打ち付けた。否定を軸に多種多様の私を体現する。状況に応じた変形が可能となるのだ。

 ソファ上部の窓を開ける。網戸を通して空気が侵入、夜の空気が暖かい。

 髪が乾いた頃、部屋に戻った。結局、風呂あがりにギターを弾かずにいた。部屋には持ってこないようにしている。手近にあると馴れ馴れしくなって対応が散漫になる。付き合う時はとことん、それもギターだけに集中する。他のことはシャットアウト。不変と変化についてあれこれと思い巡らせて今日は終わり。昼間慣れない距離を歩いたせいか、ベッドに入ってすぐに眠りに落ちた。

 カーテンの隙間からは、五日月がシャープな輪郭で照らされ、照らしていた。