コンテナガレージ

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再現と熟成3-1

 九月の第一週の日曜日。天気は曇りがかった晴れ。曇り時々晴れって感情みたいに気まぐれ。アランが散歩と間違えてはしゃいていたが、目線を合わせない私を察する。私が倉庫から出てくると彼はしんみりと地面にへたり込んでいた。久しぶりに観たニュースを思い返して駅までの坂を下っていく。

 右手は谷間に川が流れてる。車の往来でせせらぎは掻き消されていた。緊張しているんだろうか。問いかける。自分以上に見せるから緊張する、誰かが言っていた。既に、許されていると思えば演奏に集中できる。カーブの内側、円形のログハウスが人気のない姿で居座っている。無駄と思える富裕層の趣味。維持費がかかっているとは思えない風貌。傾斜地のために石段の工事をせっせと行なっていたと思い出した。

 無人は確かめなくても、なぜかわかってしまうのか不思議だ。時間に遅れないようにと一本早い電車を選んだ。だから、こうして線路で道を塞がれても焦らない私が余裕で電車を見送れる。黄色に黒の縞々棒が天をさした。

 電車に乗って二十分の短い旅。移動でも言葉次第で雰囲気を変えしまえる。ホームで見知った過去の顔が散見されたが、ロータリーを眺めて気配を殺した。無駄だ。声をかけられて困るのだろうか、それとも知られるのがいやなんだろうか。見ているのはあくまでの私であって他人ではない。

 車窓から流れる見慣れた風景は天候や植物、人の格好、動物の種類が入れ替わり季節に応じて衣替え。見知った情報に飽きて、心地良い揺れに任せると決めた。里帰りで実家の周辺を探索、公園の遊具が小さかったと当然の回答は感覚を忘れていたあなたを忘れていたに過ぎない。遊具はたぶんずっとこれからも同様の大きさで遊ばせるのだろうから、あなたが驚いたのは慣れを失ったんだ。相手の背景が見え過ぎると途端に興味を失うのは私の特徴。

 休日の車内は空いていて、二人掛けのシートも半分以上が片方だけ頭が覗いていた。三つ目の駅から目を閉じて闇の中へ。

 快速列車の乗り換える人が降りていったようだ。寝ているふりだから確認はできない。それからは本当に寝てしまった。窓枠に乗せた肘がずり落ちて覚醒。隣の席はまだ空席。誰も私のハプニングをみていなかったようだ。景色で現在地を探ると、降車駅の一つ前だった。