コンテナガレージ

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回帰性2-1

 前線の発達に伴う気温の低下、昨日との気温差。各地の天気は各自が赴く土地の状況を親切に先回り。ロンドンでは大体が雨天、もしくは雨時々晴れ。雨模様が常なら、降り具合は土砂降りに移行しない限り傘は携行しない。

 ホテルの朝と見間違うような目覚めた視界に飛び込んできた高層の風景。寒さで目が覚めなかった代償に喉が渇いていた。昨日、コンビニで買った三分の一が残る水を飲みほし、それでも足りなくて水道水を空のボトルに注入して喉を潤した。飲み水として水道水でも問題はない土地であると二日目に知れたのは収穫だろうか。簡易に身支度、面倒なので髪はひとつで結ぶ。洗面台の鏡と見詰め合い、内面にもぐりこむ。

 アイディアは前例を元に規則を遵守しながら抵触しない想像を考えだすつもり。

 代わり映えはしない。

 方法としてはこれまでで最良よ。

 この道を選ぶの?

 最有力が期日への近道。

 規則の範疇であなたを盛り込める?

 やる前に諦めているんだったら、何も言わないで。

 テーブルの手紙と一緒に置かれた真新しい見慣れない鍵をかけて、エレベーターに乗り込むと、階下のボタンを押すのに躊躇いが生じた。一階を人差し指で、アイラは押す。

 昨日借りたレンタカーははたしてきちんと返されたのだろうか、だけど妹は別の車に乗ってあの雪原に現れていた。すでに返却した後ということかも。答えの出ない問題は無駄に力を長時間、それも少量ずつ消費する、無意識においてもその心配の作用は働く。だから、きっぱりと縁を切るように問題を日常から切り離した。

 S駅までを徒歩で移動する。デザインやシルエット以外で活用されるコートのフードを頭に被せての歩行である。早朝、八時。格好にかまけている人は少ない。転ばないための歩行と寒さに耐えることだけに意識を通わせているためか、表情は一様に険しい。人の流れに反して、駅に辿り着いた。雪を払いつつ、電車を待って乗り込んだ。

 昨夜山遂に運んでもらったT駅で下車し、そこからはタクシーで移動した。忘れないように運転席に取り付けたホルダーからタクシー会社の電話番号が印字されたカードを手に取った。最新の機能によって、端末を通じてタクシーも呼べるらしい。アイラが持つのは海外ローミングの端末であるが、電話とメールに機能を集約、そうして彼女は端末を使う。なので、暇つぶしのためにこぞって指先を動かさない。そんな時間があるのなら、建築のアイディアを考えていたい彼女である。