コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ1-2

 一体自分のおかれた状況をいつ抜け出せるのか、彼は食べ進める箸の運びを止める。代わりにコーヒーを傾けた。

 ここまで歩いた短時間に、新商品を身につける流行好きの姿を確かめられた。開発の準備期間は三年、現物化の許可にこぎつけて二年、計五年の歳月を注ぎ込んだ商品がまさに今人の手に、いいや腕に渡って、もうそれは満足といってもいい。商業目的とはいえ、開発者の根本は純粋に未知の領域に思えた私の突飛な発想の具現化、それだけが望み。ブルー・ウィステリアという世界規模の看板はそのためにこちらが利用しているようなものだ、会社自体への貢献度によって報酬の増減があろうとも、私は金銭を天秤に掛ける、ほとんどの開発者には当てはまらない。

 開発作業をやめてからというもの、食べる量が増えた。いつもならばパスタを食べるにしてもきっかり正午前後に食事を取ることはありえない。開発室を出て、食堂に足を運ぶ時間さえ惜しいのだ。私はたとえば、パスタを、集中力が切れる午前の第二クールの終わりに食べる。第一と第二の間は、飲み物の補給とトイレを兼ねた数分、これで席に戻る。外へは出歩かない、気分転換などもってのほか。時間が惜しい。そのために、集中力がわずかな席を離れる場面をずれて心身に表れたときは、これまでの作業を途中で放棄するんだ、そして手技を振り返る。おかしいだろうし、興がそがれては気分に頼っていては開発ペースが遅れてしまう、そう何度も懸念されたが。しかし、長い開発期間を念頭に日々の開発に一ミリの無駄も出さずに作業に取り組むための方法が、この短期集中型の編成である。