コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ5-7

「黙ってしまってはせっかく会ったのに時間がもったいない。続きをどうぞ」反対、通路側に彼女の首が傾いた、語尾が目上の者からの許可みたいに語尾がわずかに上がった。

「気が進まないけど、じゃあ、続きを……、男が並んだ場面から話すよ」

 後手に回った関係性はこの際、無視だ。金光は昨日の回想録、その続きをなぞる。

 宇木林と名乗った男はビルの改装、普段は飲食店のプロデュースを手がける内装、外観、料理、店のコンセプトから経営に至るまでのすべてを統括した提案が彼の仕事内容だと話す。主に、個人店舗の改装を得意とし、その後は自社で手がける店舗が都心の再開発に伴う複合商業ビルや都内近郊のショッピングモール、更に郊外のアウトレットで店舗の出店を手がけるのだそうだ。ただ、金光は講師とはいえ、かろうじて飲食業に関わる末端の人間である、その僕に出店の依頼が舞い込むとは、状況の変異が宇木林の笑みの中で変化したのか、まったく想像しがたい。まあ、失うものはないし、すぐに出店を望まれても、契約を結んだわけでもないのだから、と軽い気持ちで探ってみた。

 宇木林はニシシシと笑う。そして、言葉を淡々とつむいだ。

「目新しい商品や店を探してはいます。適合に値するかどうか私の判断によりけりですけれど、あまり数多くその適合レンジに填まる人物は存在自体が希少なのです」

「私をどこで知りました?有名とは無縁ですよ」卑屈に、一段下がって、へりくだった言い方。