コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって3-1

 機種変更役は種田が務める、先月に変えたばかりの鈴木は月賦の支払いを理由に捜査の種田に任せた、喫煙の機会も含まれるはずだ。種田は、かれこれ十分を通信端末会社の窓口、駅前通店で待機を言い渡された。四つ用意された椅子は埋まり、お客は苛立ちを露わにする。端末が暇つぶしの材料だから、余計に待ち時間の消費に苦労する、と彼女は観察していた。

 椅子を立ち、店内を見渡す。入り口に対して右側にカウンター、左手は三歩で手が届く壁、新商品の実物、あるいはモックアップが並ぶ。価格、機能、新性能の文字が躍る、蛍光色で縁取どった手書きのポップ。仕様に関する表示は印刷された、艶やかで光を弾く材質だった。商品の特徴が書いてあるそれらの説明書きは空調や指先で触れると、びょんびょんと動きをみせる。

 二階の階段は入出を拒む、スレンダーな女性の等身大のパネルで塞がれていた。種田は振り返って、眺めた。出入り口の自動ドアの右手前が階段、ラウンド気味に段差が続き、奥に向う。二階は倉庫だろう。事務処理は一階で行っているだろうし、階段の上り下りは伝達に手間がかかる。店員の着替えは女性の人数が多いことからも、トイレのほかに更衣室やロッカー等の着替え場所が別に用意されてるはず、だが、彼女の角度から薄暗い奥の様子は見えない。

 端末は変更のためカウンターの中、店員の机の上に置いてあって、鈴木との連絡は途絶えた状態が継続。手旗信号でも彼が把握すれば、窓側に座る私と意思疎通の交換が行えたかもしれない。実に非現実的ではある。

「種田様、おまたせしました」名札、稗田真紀子の名前を確認。

 種田は席に着く。日差しが、カウンターの一部を白く染める。