コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって8-8

 まだ店は営業を続ける、装着は閉店まで控える、通話は証明されたし、これ以上の機能が必要に思えない、必要かもしれないし、便利で生活を豊かに、一日の時間に余裕が姿を見せるのかも、ただ、現在の生活には不必要だろう。使ってもいないのに断定するべきではない、いくつか忌憚のない意見が聞こえそうだ。取り合わずにいよう。それが理想。

 平茸、マッシュルームをふんだんに盛り込んだオムライスがランチの主役。

 ご飯の味付けは何が最適だろうか。

 切り替え。

 きのこと合うのはデミグラス、醤油ベースも悪くない、ケチャップはありきたりだ。出汁をふんだんにとったかえしなんてのも乙。

 腕輪の決め手はなんだったのか、店主はふと、レジにしまわれる箱を目で追った。手ぶらで厨房に戻る館山が首をかしげた。僕に視線の意図を量りかねたのだ。

 二つの機能が融合した商品、というのが決めてか。いいや、時計の機能は以前の端末でも補えていた。取り出す手間があったが、用事もないのにディスプレイを見返すのだから、その辺の不便さは許容範囲に収まる。すると、その他の要素が浮かび上がらなくては、商品開発の着手に踏み切る大勢の同僚たちを納得させる要素は足りていなかったはずだ。店主は館山を真似るように首をかしげた。そう、使用者の動向を開発者は先に読まなくては商品価値が見出せない、つまりだ、<しまう>という先駆的な常識を排除するのと真逆の発想にアイディアが行き着いた、流れ着いた。共存。越えることを控え、大まかなデザインを譲った。しかし、中身はまったくがらりと、最新のテクノロジーが薄い狭小範囲を見事に区分けし、機器たちの干渉を抑え、真摯に苦情を受け止め、改善に努め、ついに完成を向かえた。

 先駆者はオムライス、味はケチャップ。卵で包む発想は維持するとして、中身の具材は卵ではなく、ライスに加える。卵側に食材を混ぜて焼くのはどうだろうか、厚みの問題が生じるか。しかし、薄くスライスした茸ならば、凹凸は控えめ、ある程度の薄さは許容してくれはしないか。思い立ったら実行である。

 店主はコンロの前に立つ。だけれど、これではライスの主張が殺されてしまう。

 中身をがらりと。

 頭蓋骨がごろりと内部の固形物を動かした。

 豆を代用する。決めた。サイズを小さく、スタンダードなオムライスと豆を積んだオムビーンズなるものを思いついた。おいしいのか、実現が可能なのか、内部が囁くのは試すまでの絵空事に心配。描いてしまえば、気分は理想を描き出す。豆の種類だって豊富、あとは時間との勝負。

「ちょっと、でてくるよ」店主は着の身着のまま、厨房を出た。