コンテナガレージ

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本日はご来場、誠にありがとうございました2-1

 見計らったと勘ぐるほどに席に着くと端末が震えた。慣れていないと飛び起きそう、心の準備が必要なぐらいだった、……通話後に設定を変えなくては。

「はい」電話の応答とウエイトレスの注文が重なる、メニューを指差して、一人にさせてもらった。僕は腕輪に呼びかる。

「おはようございます」

「ご用件は?」予定の時刻はそろそろであった。ただ、搬入口に面した店主が見下ろすとおりにトラックの姿は未確認。

「実は、厨房機器のメーカーが別の注文先に間違って配送したらしくて、二十分から三十分、そうですねえ、予定が遅れるかもわかりません」電話の相手は商業ビル改装のサンダーストーム代表の宇木林である。無駄にジェントルな声だ。

「南のビル、通りを挟んだ二階のカフェにいますので、なにかあれば、こちらへ呼びに来てください。今日はここで待機してます」

「刑事さんが所在を知りたがってます、代われ、というので代わりますよ。私は一応断りましたので」最後の一言は小声だった。小音も聞き取れる、スピーカーの機能性はやはり高品質らしい、館山と交わした会話以来の通話だった。

「代わりました、O署の種田です」一定の温度、口調はやや眠気に傾いているか、電話口の女性刑事の態度を思い描いてみる。

「どうかされましたか?」僕はわざと悠長に話した。

「お話を窺いにそちらへ移動します」

「私はこれから仕事です、暇そうに見えますが」

「こちらも仕事です。先々週の交差点で起きた集団卒倒の関係者としての聴取です。では」通話が一方的に切れる、面度なことになりそう、拒否の理由が思いつく……。跳ね除ける力はおそらく弱い、ランチや仕込みといった後ろ盾、背後の守りを固める頼りは、現在失った状態で、どこからどう見てしまおうと、僕は時間を持て余している。否定はしない。