「お互い、様か」一言がぎこちなく読点をを求めた。
稗田は声に黄色を混ぜた、ぐっと踏ん張って、力を溜めて、解き放った。「ねえ、明日さ、会社で私の話し相手になってくれる?」
「二十年前、似たようなお願いをされた」
「誘ったのは、だって私だもん」
「変わらない」
「進歩が足りないんだね、私」かすかな笑い声。
「いや、あなたとの関係が変わらない」
「言ってくれるわね、トースト冷めるよ」
「コーヒーはとっくに飲み干した。お代わりは?それに食べたという嘘は私の皿に注ぐ視線で悟れる」
「いつか、隠し事は知られてしまうのかあ、この歳になって一つ学んだ、歳を重ねるもの案外、うん、悪くない。すいませーん」
「はい」
「コーヒーのお代わりを、それとハムトーストも」
「かしこまりました」
「だからさっき頼めばよかった、店員は思っているね」、と稗田。
「打ち明けたら真実、沈黙は無実だ」、と真下が締めくくり。
バッテリーランプが点滅を始めた。そのため記録はここで終了となる。
午後二時五十八分。停止。記録者 鈴木。