コンテナガレージ

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本日はご来場、誠にありがとうございました5-16

「なぜ、上空で操縦桿を握るパイロットが階下の明かり、それもブルーの明かりを見て、新製品の端末だと明確に言い当てることができたのだろうか。商品の発売前にディスプレイが光を放つ、青く光るというプロモーションは一切公開を控えていたんだ。驚かせるために発表の場で機能を紹介したかったんだろうね。つまりだ、飛行船が空に飛び立ち、ブルー・ウィステリアの上空付近で停電が起きた時刻に漂う場合、地上とは隔絶され、色の情報は絶対に知ることはできないんだ。パイロットが口にした青の言葉は、彼が事前に新製品の内容を知っていたことになり、しかも、事件当日に腕輪の使用を許されていたのは、日本支社社長の林という人物だった。彼がそのとき停電にまぎれて、屋上にいたのさ」

「暗闇の中でお客を驚かせようとした、準備のためにこっそり移動した、言い訳はいくらでも警察に話せるように思うんですけれど……」小川が反論を言う。

「だったらどうして黙ってる必要があるの?」

「新製品の売り上げに影響するから、ですかね、はい」

「人が殺されたのに?」

「いや、だってまだそのときに殺人は行われていたとは……ああっつ」

「そう、殺人が行われていたんだ。停電の前か、まさにそのときに。だからこそ、警察には言い出せなかった。彼だけが屋上にいたとしたら、堂々と証言をすれば済んだことだ、なにも隠す必要性はないから。しかし、口をつぐんだ。どうしてだろうか、彼は目撃者の役割をあてがわれたからさ」

「ううんと」館山が唸った。「どういうことです?林という社長は、だって殺害に関与してないのだったら、正直に警察に証言した方が、よかったのでは?」

「殺害に関わった、関わっていないのやり取りとは次元が異なる。スキャンダルは必ずしも真実のみが取り上げれたりはしない。憶測で十分なのさ。すなわち、何らかの形で屋上に林さんは呼び出されたんだろう、たぶんサプライズ発表の役目をこっそり誰かに指示されたんだ。ところが、屋上に待ち構えていたのは、その死体が作り出される場面だった」