コンテナガレージ

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 館山リルカと小川安佐にランチのメニューを任せてみようと思う。思いつきとは少しニュアンスが違う。前々から温めていた計画をそろそろ着手、始めようか、という時期に彼女たちの気概と技能とレシピ専攻眼が肉付きを帯びたのである。

 いち早く、本日も店を一番に潜る。汚れた外壁は綺麗にせずに現状に留めた。ホワイトニングの整った歯を見せられても、内装や料理とのバランスが崩れては、逆効果になりかねない。もっとも不必要な修復は断るつもりであったので、話が持ち上がった際に店主は即座に断りを入れた。店の再開を優先すべきである、不動産会社の桂木にはそのように厳しい対応をとった。要因を持ち込んだのは彼のミスが元となるので、同情を寄せるのは誤った態度である、店主はピザ釜に火を入れる。新聞紙、割り箸、薪と火種を移した。暖気を求める季節にピザ釜は別の作用をもたらすはずだ。

 斜向かいのコーヒースタンドが風景に馴染む。

 二店を掛け持つ、樽前が忙しなく、ただ黙々と、必死に、しかし雄弁に体は動いていた。お客のためというよりも、それは嘘を前面に押し出した行動様式に思えた。あなたたちで私は住まいと食べ物の確保とと税金を支払うのだと。

 釜の横、パンをこねる石の天板に向き合うと、コピー用紙が見えた。

 僕と似た境遇の人物が喋った痕跡である。

 あの刑事たちが置いていったものだ。

 それはアイスコーヒーの作り方で締めくくられる。

 磁石をはずして紙を掴む、店主は丸めて釜の内部に放り込んだ。

 

ー終わりー