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私は猫に石を投げるでしょう3-5

 主だった形、原型、輪郭すら、薄ぼんやり、おぼろげで亡羊としてる。眠い目を擦っているからだろう、まだまどろんだ意識から醒めてない証拠だ。起きなくては。自室。区切られた空間。私だけの場所、仕事場。隔絶の居城、一室。異質、居室。言葉にはそれぞれに響きに似た意味があるように思う。こうして並べて、口に出した私の稚拙な知識だけでも、意味合いはまったく異なるというもの。もしかすると、ペンも人によってはその意味合いが異なるのかもしれない。思い過ごしか、それとも考えすぎか。いつも考えてばかりだ。囚われる?つまりは、形状など普遍的なものは形を変えるべきではないのかも。だって、特殊な形に惹かれるのは、ペンを持っている人たちだ。しかし、今回のコンセプトは複数所有する人へのもう一本である。忘れていた。

 悩む。しかし、頭を抱える重大な事態とは考えすぎ。他の社員はよく、頭を抱え、天を仰いでは天啓を待っている。そこには最終的に自分が降りてきて、自分が教えを解くのだ。

 形状。異なった形状。間違っているような印象の形状。重たい。フォルムは丸みを帯びているな、私は飛躍する。飛び石で跳ねるように。曲線を意識。円錐。ペン先につれて細く、ノック側に広がる形状。こういった商品はこれまでにあったように思う、私が言うのだから、おそらくは専門家たち、クライアントの守備範囲だろう。ここからが私の真骨頂だ。大胆に色は一色、それもマットな色合い。ロゴも入れない。それが条件である。外国の商品に近いだろうか、無駄なものは一切排したつくりで勝負を仕掛ける、もちろん勝機はある。価格は低価格より少しだけ高い価格設定を提案しようか、あまりにも高すぎた高級志向だと手が出ないが、あまりに低価格であると今度は、予備のペンとして購入を検討するお客は手に取らない。決まった。存分に深呼吸、そして仕様書を作成する。

 まずは、デザインを短時間で描ききる。対訳のように別紙に説明文を挿入。最後に、使用目的とコンセプトを添えて終了。最初に説明を書かなかったのは、初見の印象をお客と同じ立場で見てもらいたいがため。しかし、これは聞かれるまで話さないつもり。すべてを話すのが目的ではないことも、また組み込んである。それらも尋ねたときにのみクライアントには説明しようと思うのだ。

 私は席を立って、階を下りる。一階、一基のエレベーターが故障中のようだ、作業服姿の業者が、大きな道具箱と荷台、それからロープや滑車などを広げて作業に取り掛かる場面に出くわす。緊急の事態でもなさそうだ、横目に彼らを見やって、屋外に出た。エレベーターの故障らしい、社屋に吸い込まれ通り過ぎる声が言っていた。