コンテナガレージ

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私は猫に石を投げるでしょう3-7

 久しぶりに想像もつかないほど気分が高揚している私は、ディーラーに急いだ。そして、車を不完全な状態で自宅に運ぶように無理を願い出た。乗らないことを約束し、他の安価な町乗りの車をその代わりに一台契約。買い換える手続きをその場で踏み、点検中の車は私のガレージに運ぶように要求を通した。その足で書店に向かい、車関係の書籍を買い求める。自分は何も知らない、どういった原理で動いているのかも。またそれが現在と数年前、あるいはさらに遡った時代の車との比較、変わった部分、テクノロジーの進化などをまずは叩き込むべき、脳内の知識欲が高まりを見せる。久しぶりに追いつけない感覚、仕事以外で味わえるのか、私はなんて身近なアイテムを見過ごしてきたんだろう。

 書籍を紙袋で受け取る、両手がふさがった。足りない分は、ネットで注文しよう。もちろん、ネットでこれらの知識は集まるが、その情報が掲載されるサイトを探すまでの労力を私は書籍代に変換したのだ。こうしてマンションに帰り着いた。

 有意義な時間。音は書籍を捲るページの音だけ。

 一人が恋しい、と普通は思うのだろう。誰かと埋めたい時間なのだろう。だが、私には必死で何とかして、それほど本気ではないのに、行動を余儀なくされているように思う。否定しているつもりはない、私にもそういった感情は残っている。ただ、すべてを注ぎ込めるまで私はまったく梃子でも動けないだろうし、その兆候は水が溢れてはじめて知覚され、そして行動に移すのだ。

 風が窓を揺らす、まるで外からの訪問者が開けてくれと、頼んでいるみたいだ。

 要求に応えて窓を開けた。飛び込んできたのは、まだ冷たさが残る春には程遠い冬の突風だった。