コンテナガレージ

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私は猫に石を投げるでしょう4-1

地上→六F

 真島マリは会社の取締役会に出席、忌憚のない意見を求めたにも関わらず、飛び出した意見はあまつさえ、押し留めた現状維持を匂わせる発言に終始、まるでこの場所が永久不滅、永続可能な浅はかで稚拙な論争とも言い難い、他人の意見をなめるような発言であった。彼らも過去はデザイナーという肩書きで生きてきた人種が、権力と地位とそれなりの資金を得ると、誰もが変わってしまうのか……。残念でならない、というよりも人はそういった能力に傾き易い性質なのだろうと、私は解釈を改めた。安定した地位も多分に影響してる。いっそのこと、気持ちを引き締めなおすために、一社員に格下げを考えるべきだろう、落とし穴に落とすときに、地面の色が違っていたり、不自然に枯れ葉が敷き詰めていたり、ヒントはこれまでの貢献として与えておくことにしよう。本来ならば不必要だ。しかし、弁解の理由を手元に残しておくべきだろう。

 出迎えはない。秘書もいない。私にだけ、特別に挨拶をする社員もこの会社に不要。すべて社員は独立した体系を各個人で担う、いわば個人の会社を私が取りまとめていると言い換えられる。社員にまぎれて、地下の駐車場からエレベーターに乗る。七階以上は他の業務に当てて、私の社長室は六階の一部のフロアを使用する。それでも広すぎて、持て余している。フロアの大半は当社を訪れたクライアントとの会合の場、応接間と会議室が占める。しかし、クライアントはほぼネット上でのやり取り、時には電話での直接の連絡ぐらいなもので、握手を必要とする、または義務的で建設的な言葉を言い合う食事を取り入れた直接の面会は控えていた。

 対外的に敵を作りやすい環境で仕事を始めたものの、ことのほか、反対意見は聞かれなく、遠くは海外からの依頼も多数寄せられ、海外担当の部門も作ったぐらいだ。経営は順調。いいや、私は階を上がる数字を窮屈な箱の内部で見つめる。何も起きていないときにこそ、すべてのチェックを施すべきなのだ。不具合は形に現れてからでは対処が実に遅い。迅速な対応とはつまりは、見逃したミスをただ急いで防いでいるに過ぎず、それを発生させないのが真の最良といえる。だが、はきちがえた他企業の広告が蔓延により、まるで迅速対応されることにお客は感謝を抱いてしまう。まったく、考察が足りないお客も無知だが、しかしそれを当たり前に摺り替えた企業側も何食わぬ顔で平静ときめ細かなサービスとして前面に売り出していたりもするのだから目も当たれらない。