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DRIVE OF RAINBOW 2-2

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「刑事さんあのこれは脅迫状ではないでしょうか?でしたらすぐに本部に連絡して協議しないと……」

「脅迫状のことを知っている社員の方はどのぐらい、いますかね?この支店の方は全員知っているのでしょうか?」

「ええ、整備士と不具合のあった車をお客様に売った担当者には話しました。他の社員になら会社で話してるかもしれませんが……社外秘ですし、公になれば自分たちの首を絞めることになりますから口外はしていないと思います。掲示板の書き込みを見つけてまだ一時間ほどですし……」

「そうですか。会社の関係者が書き込んだことも考えられます。以前の書き込みと比べてもなんというか、主張が見られます。犯人ならば気づいて欲しいとの願望にも読み取れますし、模倣犯であれば文面や言葉の選び方が異なるもの一応の納得はできますから。会社の上の方たちにはやはり伝えるべきでしょう。社内の誰かが関与してるかもしれませんしね」

 頭を抱えた支店長は、あわわと口にしながら携帯を取り出し呼吸を落ち着かせてからこれまでの出来事を丁寧な口調で伝えた。

 鈴木はじっと犯行声明のような文章をもう一度見返してみる。

 兄弟の一人が欠け落ちる。

 不具合の一台が事故を起こすと案じているのか。そのあとの自滅と全滅の箇所もよくわからない。自滅はおそらくこの会社のことだろう。しかし、全滅とは一体誰を、何を指しているんだ?それと月。新月になる時期に事故が起きるまたは起こすと言っているんだろうか。鈴木は無造作に頭を掻いた、そもそも寝癖で髪型を整えていなかったので誰からも乱れを指摘はされない。

 支店長が窓際で電話を終えた。「本部は警察と協議を取り行うようです」

「上は現場をなんとも思っていない、どこの職場でも同じか」鈴木はため息をついた。

「まったくもって同意見ですよ。あの人達は何も知らないのですから、あれこれと無理な指示を出せるんです。仮にも昔は現場で働いていた人間なのに」支店長の言葉は出世レースから脱落した尚早が感じられた。「事故はまだ起きていないですよね?」心配になった支店長が詳細を尋ねる。

「大丈夫です。私のところにはそういった情報は届いていません」

「良かった」

「支店長!お電話です」

 呼びかけに従う支店長。去り際に断りを入れる。「分かった、今行く。すいません、少し席を外します」

「どうぞ、私のことはお構いなく」

 鈴木は支店長の姿が見えなくなったのを見計らって熊田に指示を仰ぐことにした。二度目のコールで繋がる。

 

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