コンテナガレージ

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手紙とは本心を伝えるデバイスである5-2

「それはわかりません。だだし、凶器を持っていなかったと考えるならば、成立はします」

「大げさな凶器に思えませんけど、頭を殴るのにかさばる物が必要かしら」先を促すような刑事の表情だったので社は言い加えた。「例えば、古典的なのは氷を持ち運び、凶器として利用する。溶けてしまえば残りません、トイレにでも細かく砕いて流したら、証拠は現場から消えます」

「それを持ってエレベーターに乗れますか?」

「うーんと、大丈夫ですよ。たぶん、工事中のエレベーターを利用したんですよ。故障は演出、実は正常に動いているとか」

「可能性はありますね。出入りが自由で監視カメラの記録が遮断されていたという前提ですがね。調べるのを忘れていました。そうだ、エレベーターに監視カメラはついていますかね?」

「どうしても可能性を確かめたいんだったら、聞いてみるべきですよ。直接」社は屋外の出入り口脇のエレベーターに首を傾ける。

「まだ仕事中みたいですし、もう少し様子を見ます」まるでお金を出し渋るように刑事は訪問を見送る言い訳を私に告げた。事件を調べる気がないのかとも疑う行動だ。

「変な感じ。私たちも仕事中なんですけど」

「差別という事ではありません。あちらの方は警備に帰る際に引き止めてもらう約束ですから、それまでには応援が駆けつけるでしょうし」

「そういえば、まだ来ないんですか、警察の応援。ちょっと遅すぎると思います」

「ええ、橋が崩落したのです」

「崩落!」わっと、社は口を押さえた。幸い、社員は社の驚きに無反応であった。

「ご存知ありませんか?Z町、国道の橋が崩落したんですよ。それで応援が遅れている」

「だからか。ですけど、それって犯人にとっては好都合かも」

「ええ、犯人がこの場から逃げ出せれば、の話ですがね」

「内部の人間だって言うんですか?」

「ええ、ほぼ間違いないでしょう」

「もしかして私たちのことを疑ってますか?冗談じゃありませんよ、私はたんに社長には相談を持ちかけに行ったまでで、面識はほとんどないんです」

「わかっています。どなたも一様に互いを特定するほどの面識はありません。社長に頻繁に会う人物もほとんどいなかったことから予測を立て、それは改めておっしゃられなくても認識してます」

「では、すぐにでも今日は帰らせてもらいます!」気分を害した私。なぜだろう、犯人の可能性を示唆を受けただけなのに、どうしてか腹が立ってしまう。「子どもを迎えにいかなくては」