コンテナガレージ

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エピローグ1-13(終わり)

「おじいちゃんとおばあちゃんに会うのは、はじめてだよね」灰都が祖父母の間に挟まれて空港のラウンジで搭乗を待っていた。遠足で背負っていたリュックが灰都の背中で寄り添っていた。シワの多い顔で二人はニコニコと柔和な顔。それは嘘つきの顔でもあった。たぶん、当たってる。先生が本当のことを言わない時はいつも同じ顔で話すから。

 お母さんはどうやら死んでしまったらしい。だから、引っ越すんだって。ケンちゃんにお別れの挨拶も言えなかった。だって急に決まってほとんど学校にも行かせてもらえなかったもの。リュックにはゲームと筆箱と着替え、それにお母さんの携帯電話を入れてきた。他にも持って行きたい物があったんだけど、リュックに入らない物は持って行っちゃいけないって言われて、しかたなく選んだって感じ。今度の家はずっと暖かい場所にあるんだって。雪は降らないらしい。雪虫は嫌いだけど、スキーができないのは残念。二人は頻繁にお菓子を食べろと催促する。いっぱい食べたらご飯が食べられなくなるって知らないんだね。それとも、気に入られるための行動かな。携帯は形見だからとわがままを通して手に入れた。でも、本来の所有者は僕なんだ。

 アナウンスが流れて搭乗ゲートに列が並ぶ、手を引かれて僕もそれに加わる。

 機内は前と後ろが近すぎる席。窓側に座ってじっと羽を見ていた。機体が動き出す頃になると祖父母は眠ってしまった。

 飛び立って上空の景色をひと通り堪能すると、トイレに立った。二人を起こさないように慎重に足の間を抜ける。

 個室に入り、携帯の電源を入れる。

「久しぶり、元気?」

 表示された画面には見覚えのある文面が浮かんでいた。