コンテナガレージ

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ガレットの日8-3

 タバコを吸った。国見をよけて煙を吐く。「疑ってはいないよ。真実の発言だけ、僕は現場にいなかった、行動を予測するデータも揃っていない。不確かな想像は無意味だ」

「館山さんと安佐はそうは思っていません、私になにも言いませんでした。とくに館山さんは」

「明日は今日の君ではないよ。引きずる必要はない。今もこの瞬間もだ。休憩を取らないっていう究極の方法もあるね、何か仕事をかこつけて店に居座ることも可能だ。僕を、要求を退けて、反発してね」

「店で休ませてもらっても構いませんか?」

「無理だね。それなら館山さんだって、厨房で休憩を取りたがる」

「行き止まりですか……、違う、八方塞りか」

「そんなに選択肢があったかな?」店長はおどけて国見に聞いた。

「いいえ、たったの二つです」彼女が自然に笑みをこぼす。

「仕事を見るけることだね、僕を納得させる」

「店の外の椅子で休みます!」彼女の目に輝きが戻った。息を吹き返したらしい、いいや、元々見えていた景色を改めて捉えたのだ。「それなら文句はありませんよね?店の仕事もできますし、もちろん、晴天か曇りの天気任せですけど」

 自身を捉えなおした国見が帰って、店長は明日のランチを店内を歩きつつあれこれと可能性を探る。

 細かな細工のシャンデリア。

 細工は細かい、だから細工、二重の説明、表現。心地よい空腹だった。

 フランス料理については避けるべきだろう、こちらも学ぶ必要があるのだ。彼らに取り込まれ、隙をつかれない為に。相手に従うのではない、知識を求めて立場を平等に保つ、相手の言い分がルールの順守を前提とするなら、利用するまで。世間から離れるには取り巻く規則をあらかじめ把握しておかなくては。たとえそれが不本意だとしても。

 店を出た。空気が澄んでいる、雨が埃をかき集めたのだろう。重たい地下への扉を引いて、階段を慎重に下りた。雨の名残、濡れた階段が今日の天気を知らせてくれた、天気予報を見なくても店長はこうして世界を知る。