コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

蒸発米を諦めて1-4

「二人とも手を止めないで」ホールを取り仕切る国見がトレーに大量の食器をかき集め、洗い場に運び込み、雑談を注意した。店長はテーブル席の上部、秒針が滑るように動くスイープタイプの壁時計を見る。

「館山さん、休憩だよ」店長は流れるような手さばきでたまねぎの皮をむく手元を見つつ、休憩を促した。

「今日は、外混んでますよね?店にいてもいいですか?」

「働くってことかな?」店長が聞き返す。

「ただ働きでも、やっぱり認めてもらせませんか?」店長は確実な休息を店員に求める。体力の低下は今日でなくとも明日、明後日と疲労に変わり、いつかは表に出る、つまりミスや怪我となって、お客への対応に影響すると考えている。若い、というだけでも、店長は認めはしない。

「気分転換は必要だと思う。店に留まるのは構わない、けれど一度は店を出た方がお客のためだ。今は張り詰めていない気分も、この先の忙しさによっては息が詰まるかもしれない。強制ではないよ」

「わかりました。仕方ないですね、近くにいても教えてくれそうな雰囲気は感じられないし、それじゃあ、あとはよろしくね」館山は力強く小川の背中を叩いて、タイムカードを切った。手に持った泡だらけの皿を危うく落としかける小川。

「もう、気をつけてくださいよう。一枚いくらすると思っているんですう?あれ、いくらだろうか?」

「ばか」館山は声だけを厨房に届けて、通路に姿を消す。

「だからあ、気安く言ってはいけないって、何度も言ってるじゃないですか。ひどいですよ」

「言葉を選びな、考えなしに口にするから言われるんだ」小川はぐっと顎を引いて国見を睨んだ。「あんたも接客係も兼ねてるんだから、言葉遣いに気をつけなさい」

「目くじら立てて、怒らなくっても。お客さんの前じゃあ、きちんとしてますから、大丈夫です」

「行ってきます」コックコートに、上からマフラーと黒のジャケットを軽く羽織った館山が休憩に入った。更衣室は店の奥まった位置、路地に面したドアに続く通路をまっすぐ進んだ、奥から二番目、左側の扉にある。突き当たりの非常ドアは店外に設置されたこの店専用のダストボックスにゴミを運ぶ以外の用途にまったく使わない。更衣室の隣が食材を保管する倉庫、その真向かいがトイレ。

「行ってらっしゃい」館山を送り出す小川と国見の声が揃う。揃った女性の声は単独で聞くよりも、性質に磨きがかかる。