コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 3-5

「どういうこと?なんとか言いなさいよ!」怒声が彼女の口から発せられる。外見とは裏腹。では、怒声に似合った外見とは、店主は考えるも最適な顔は浮かばない。

「あなたはその紙を見て、何か文字を読んであるいはイラストを見て、問いかける。私が拝見していないのに、どうして答えられるでしょうか?」つかつか、板張りの床がきしみ、彼女の靴音が固い音を鳴らす。胸に突き刺す勢いで紙が渡された。

 突然のお手紙をお許しください。私はあなたの料理に感銘を受けた大豆を敬愛する者です。忘れもしません、行列に並び手にした大豆のあの味はこれまで出会う大豆の中でもっとも感銘と至福を与えてくれた、この世に二つとない最高の食べもの。私はあれから幾度もランチに並びました。いつも仕事柄、列の先頭に並ぶことはままなりません。それに、ランチのメニューは私はいつも見ないようにしています。だって、初めての出会いをまた体験できたらと思うと、前もって手に入る喜びを抱いて並ぶなんで、馬鹿げています。プレゼントは驚きが半分を占めていますから。

 こうしてお手紙を差し上げるのは、悩みました。ご迷惑は重々承知、いいえ、こうして手紙を出したのですから、あなたの迷惑を私は侵害したのです。けれど、これだけはお伝えしたかった。

 もう一度、大豆を使ってランチを作ってください。私は、あの料理に救われました。生きるすべを見い出せたのです。大げさかもしれません、ですが、本当なのです。詳しいことを書き記しても、余計な心配をさせるだけですから、手紙には書かないでおきます。ただし、あなたの作る料理を心待ちにする人が生きてることは、片隅で構いません、覚えておいてくれると私はとてもありがたく、私は今日を生きれます。

 ここまで長々と稚拙な文章を読んでいただき、感謝します。最後に、ぶしつけですが、もう一つお願いがあります。

 小麦は店から排除してください。我々の食べ物ではありません。西洋の食品。あなたの店には似つかわしくない。お米はやめてしまったようのですので、しかたありませんけれど、何か他の食材で新しいメニューを考案し、小麦を一掃してくれる店を願っております。

 ではでは。大豆信者より

「大豆信者……、失礼ですが、あなたはこの名前に聞き覚えがありますか?」店主は率直に手紙に記された小麦論者と対照的な名称を尋ねた。

「名前の通り、大豆を敬愛して止まない私の敵。あなた知っててきいてる?」

「予測はつきましたが、確証は得られなかったので、態度が変わったあなたなら知っていると思い、質問をしました」

「何、その合成音声みたいなしゃべり方」彼女は胸を膨らせる、大きく息を吐き、吸い込む。「まあいいわ。先手は私だから、まずは私の要求を検討してちょうだい、店長さん」

「検討も何も、こたえは決まってます。小麦だけを取り扱うのは、店のコンセプトに反する、よって申し出は却下させていだだきます」