コンテナガレージ

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エピローグ1-1

 観客、演奏家神隠しに遭った小さな地下のライブハウス。場所は各自が想像して欲しい、中心街のどこかである。

 彼女は琥珀の液体を無骨で厚いグラスに注ぐ、二杯目。数センチほどが一杯の基準、待ち人が顔を出す三十分弱の時間をかけてグラスを空に、カラカラと一杯目は陽気に笑い声を立てたのに、見るも無残に氷の角は丸々取れてしまった。ほどよい酔いが回る。私の頭はやっと常人の回転に落ち着く。

 対面。

「やけに寂れた場所を選びましたね」足音が聞こえたが、グラスをものめずらしそうに見つめ、呼びかけを待った。

「前の店を少し離れてみようと思って、いつも同じ場所だと怪しまれるわ。座ったら?」

 男に同じ液体を差し出す。

「事件が解決しそうですよ」

「助言したらしいじゃないの。どういうつもり?」

「上司の立場を思い出したのでしょう」

「他人事みたい」

「たまには表の顔を見せておかないと、同じ行動では怪しまれますから」

「誰が捕まりそう?」

「虚偽の証言と事実の隠蔽が妥当ですかね」

「大企業の重役もかしら?」

「さあ、その辺はあなたのほうが詳しい」