コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 5-5

「店長は、真剣に経営を考えているのか、遊んでいるのか、私、たまにわからなくなります」国見蘭の前職は飲食店の雇われ店長を十代の若さで務めていた。全国チェーンの系列店のアルバイトで彼女は入店、しかしその店は新規に開業した商業施設のレストランフロアの一角に出店したために、忙しさはまさに忙殺の一言で、休日すら休憩すら取れない状況に抜擢された本社派遣の店長は、体調不良により戦線を離脱、代行は本社からの応援、他店の店長が数週間を勤め上げたが、その人物には自分の店があって、当然、代理は解消される。そこで店長の抜けた穴の補填にアルバイトの国見欄が抜擢された。無知という自信が、突き進む勢いの店に彼女の性格が適合した。彼女は数年を店長職という肩書きで勤め上げ、店舗の採算が取れなくなった今年の春、店舗の消滅と共に彼女は社員に登用された飲食店を辞め、現在に至るのだった。経験的には僕の次。館山よりも場数を踏んでいる。混雑時の対応でその実力が計り知れた。落ち着いていながら、常に客席に目を配る、また厨房の料理にある程度の知識を有するので、料理を彼女は作れるのだろうと、店主は推測。ただし、すべてを一人でこなしてしまう癖は時に疲労の蓄積を誘発するのが難点だ。こなせる分、人を使うよりも自分で動いたほうが早く正確で効率が良いと、考えよりもしみこんだ記憶が体を操るんだろう。ホールの従業員をこれ以上取らない理由はそこにある、彼女の後続が育ちにくい。後付けかもしれないが、厨房を兼任する小川には国見も棘のある言葉は押さえいて、一線を越える言葉を吐かない。お客の固定化がなされたら、次は従業員の環境を整えるか、店主は脳内のホワイトボードに黒のマジックで書き込んだ。
 一息の合間。もてあました暇に、不適合なお客が舞い込んだ。どのようして黄色のテープをくぐってきたのかは、あえて尋ねないでおいた店主である。
「すいません、お店開いています?」女性が顔を出した、ドアに手をかけて体、上半身と白いシャツがせり出してる格好。胸元のポケットには細長く黒い髪留めが三本刺さる。よく見ると女性客は前日の予約客であった。
「どうぞ、お一人ですか?」レジの国見が対人モードに切り替え、応対する。
「いえ。あのテイクアウトのランチをこちらではじめたと聞いたもので……」
「ああ、申し訳ありません」国見は腰を折った。「もう売切れてしまって」
「そうなんだ。残念。明日はテイクアウトできますか?予約ができればありがたいです、取りにくる時間はすぐ近くですから。私、お昼の時間は店、あのそこで美容室を経営していまして、席について食事は取れなくて」一端の落ち込んだ気分が盛り上がり、水面に浮上。彼女は代替を常に抱える、または考える状況に生活を送っているのだろう。
「ひとつお伺いしてもよろしいですか?」店主が厨房を出ていう。彼女の正面に立つ。五十cmの距離。