「ううんと、でもですよ、まだ襲撃の理由にまでは繋がらない」
「……威嚇かもしれない。最初から脅しが目的で事件から身を引かせる算段さ。横転した車も演出だったのかもしれん」
「あれがですか?いいや、ありえませんよ。だって、こうぐるんぐるんって何回転したと思ってるんです」
「殺される運命だったのさ。失敗を犯して」
「なんだか古臭い組織ですね、失敗を認めないなんて」
「とにかく今は、現場を離れ熊田さんたちと合流することが先決。念のために連絡してみろよ」
「ああ、あの、携帯無くしちゃって」
「どこに?」
「ええっと、車に」
「探せよ」
「じゃなくって、相田さんの車に置いてきたんですよ。ほら灰、また落ちますよ」
相田は灰皿に灰を、口に煙草を咥えハンドルを握りなおし、内ポケットを探った。しかし、さぐっても携帯の感触がない。
「携帯がない」
「そうだ、相田さん携帯も、すいません、車に置いてきちゃいました」