コンテナガレージ

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手紙とは事実を伝えるデバイスである3-2

 汗が出てきた。今日は曇り空だったのに。仕方ない、室内は女性用に足元を中心に暖気が送られる空調システムなのだ。

 一応、立ち上がって前後を確認。大胆に捕まる覚悟で私の殺害を企てることはありえない。捕まらないために私を殺すのだから、捕まりたいなら私を自由に悠々とを泳がせておけばいいのだから。

 クライアントへの送る作業内容の最終チェック。大丈夫か。過ぎる不安は歓迎する、相手へより良いアイディアを送る気概の表れ。わかっているさ。私はそれほどの才能がないことぐらいは。しかし、最低でもない。悲観することはないのだ、私が立つ場所からの景色を相手に届ければそれが最善なのである。最上を求めるのは次の機会に。納得はできないかもしれない、しかしだからといって区切りをつけないのはさらに最悪。昔の僕だ。アイディアに自信を持てずに、形すらできない、日々の葛藤。不足を見つめる覚悟を決めたら、そこからはもう波に乗ったように、自然と歯車がかみ合ったような気分。振り返られる心境の変遷は、期限を決めた理由に納得ができた証拠。

 振り返りはそのぐらいにしておこうか。思い出しても、あの時の私に声をかけて、手を繋ぎ、意識を通わせても、包まれて色を塗り重ねた現在の僕とは別人なのだから。

 息を吐いて、吸って、また吐いた。小気味良く動く頭部、はみ出した靴と床とのコンタクト、肘を突いた窮屈な角度、ぶらぶらと流れるような腕の振り、いつの間にか点いていた照明、ディスプレイの幾何学模様がめまぐるしく回転。

 それぞれに思うところがあって、僕は死を予感しているが、誰にも打ち明けないので、知る由もない。

 覆い隠された真実というものは、現実に吐き出してはいけないのかもしれない。