コンテナガレージ

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重いと外に引っ張られる 1-2

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「何か、とおっしゃいましたから当然メニュー以外のものが欲しいのだと」
「そういうわけでは、あのでも、もし、可能なら作ってもらっても……」
「かしこまりました」そう言って女性店員が入り口近くのレジのあたりでコーヒーを慎重におとしている店主に近寄るとカウンターに座る男性のすべての両目が彼女を追っていた。そうか、彼女目当てのお客が自分を含めて多数存在することを認識した鈴木は、彼女からは自分も彼らと同じであるとみなされているかと思うと行動を自重しようと決意した。好きな相手への求愛は否定されるべきではないが、こうも一度に見せられると彼女には恐怖すら与えてしまうのではと感じる。
 彼女は日井田美弥都、事件の容疑者として殺人の疑いをかけられつつ、自身でその事件を解決に導いた張本人である。一見清楚なお嬢様のように映るがその実は種田よりも冷徹な一面を持つ事実だけに目を向ける機械、あるいは装置といっても過言ではない。言葉遣いも端々に他を圧倒する破壊力が内実を伴うので自然と人は納得で受け入れてしまう、魔法をかけられていると人は思うのだろう。魅力とは、全面に押し出すのではなくある程度は見えないようにそれも自然に隠していてはじめてその人を知りたくなるものである。向日葵も大変に素敵な花であるけれどもひっそりと咲く水仙に興味が湧いて手を掛けたくなる。女性は男性に対する認識において間違っているフシがある。造語を創りだして売り物にしているだけだと気づいていながらも使用し流れに飲まれてあれよあれよと戻れなくなっている。雑誌やネットの影響だろうが、名前に当てはめてばかりでは人の底なんて一生知れないのに。