コンテナガレージ

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店長はアイス 恐怖の源2-2

お題「コーヒー」

「今週はもっと暑くなるってさ。アイスコーヒー、余分に仕込んでおかないと」レジ前が店長の定位置。大きなお尻を小さな座面の折りたたみの椅子に乗せた店長が言う。私にいっているのか、美弥都にはわかりかねた。
「夕方前の落ち着いた時間に作ります」
「そうしてくれると助かるよ」
「お店、開けますか?」
「煙草吸っていいよ、まだでしょう?」
「もう、開店時間ですよ」
「大丈夫。どうせまだ誰も来ない。来たら睨み付けて追い返してやる」おどけた表情の店長の言葉に甘えて美弥都は煙草を一本エプロンから取り出し、ライターで火をつけた。店内は分煙をしていない。世間の流れは完全に分煙であるが、この店は煙草とコーヒーを楽しむお客がほとんどであったのでお客の嗜好を優先する。とりわけ、女性からは煙草の煙をどうにかして欲しいと、要望が寄せられる。そのたびに、自分の匂いにまずは気づくべきだと私は諭してきた。合成された匂い、自然由来の匂い、どれも自身をより良く見せる香りだ。意見を言いたがる人はすべて何かしらの匂いをたずさえている。鼻が敏感だとは思えない。だってそれならば自分の匂いも鋭いはずだ、と思う美弥都である。ただし、どうしても煙が嫌だ、でもコーヒーは飲みたいと主張するお客は二階を勧める。一階はカウンターで常連のお客が多数、二階ならば煙に出会う確率は低いのではないか、そう伝えている。
 カウンターの端に小窓、駐車場、猫がごろりと寝転んでいた。女性の喫煙は格好いい、または低俗の二つに選別されるらしい。以前、休憩時間に駐車場で煙草を吸っていたらお客に、女の煙草は嫌いだ、といわれた。そのお客は確か煙草を吸っていたと思う。吸っていなくても構わない、しかし、女の理想像と私とがかけ離れていただけのことだ。違って当然。美弥都は煙草をアルミ製の小振りな蓋つきのバケツに落として消火。今日一番目のお客が来店。「いらっしゃいませ」最小の笑顔で彼女は出迎えた。