コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

店長はアイス  過剰反応6-5

「現場の高台、ベンチの裏から落ちたとして体に傷が付かないのは不審だ。また、頭に受けた衝撃が局所的であったことは、頭蓋骨に広がる衝撃の度合いが物語る。彼女、被害者は頭よりもより小さな硬質の物質によって損傷を加えられたとの考察、調査結果だ」

「衝撃物の接地面が広かったのかもしれません」種田は意見を述べた。刑事の資質、欠かせない予想の一つは真実を求める探究心である。ただ、彼女のそれは多少ニュアンスが異なる。もっとより精密に厳密な真実、真意を彼女は科学者や研究者のように知りたいだけなのだ。その過程において事件が解決すると、言い換えもできる。猪突猛進。周りが見えていないのではない、あえて見ていない種田である。

「いや、頭から衝撃物にぶつかる、または衝撃物が頭にぶつかれば、頭蓋骨のひびはもっと四方に広がっているはずだ、確信はもてない。その辺は計算のうまい奴にでも聞いてくれ。捜査の混乱も招きかねないから、あえて最も可能性の高い主張を伝えたんだ。不満か、これが?」

「いいえ。一方的な見方に捉われてはいない、と知れたので満足です」

「そうか」

「お疲れのようですね?」熊田は労を労う、おそらく神たち鑑識は徹夜で解剖を行っていたのだろう。神の落ち窪んだ眼窩に隈がくっきりと滲んでいた。デスクの女性も数回、あくびを繰り返していた。

「他に遺体についての疑問は?二度も説明するのは嫌いだ」神は口から煙草を外すと指先に挟む。

「被害者の部屋にウエディングドレスを見つけました。彼女は結婚を前提に付き合うパートナーがいたのでしょう。しかし、相手の気配どころか、存在すらも浮かんできません」

 神は鼻で笑う。「何が言いたい?」

「妊娠をしていない、というのは事実ですか?」

「ああ、そういったつもりだ。お前の言い方は調べ直せって聞こえる?」

「念を押して、確かめたのです。深い意味はありません」

「もう話すことはこれっぽっちも残っていない。そろそろ開放してくれ、煙草が吸いたくてもここじゃあ吸えない」

「喫煙所に移動しましょうか?」

「まだ、あるのか?」鋭い目つきで鈴木を睨む神。たじろいで鈴木はすぐに意見を取り消す。

「いえ、その、大丈夫です」

「そうか」

 熊田たちは立ち上がり、コーヒーを飲み干す前に神に半ば追い出される形で廊下に出た。種田は部屋に戻り、熊田と鈴木は二階の喫煙所に移動した。頭とドライブの糖分を補うため、熊田は、好まない甘めの缶コーヒーを買ってから喫煙ブースに鈴木に遅れてはいる。彼にもコーヒーを渡した。