コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?7-2

 一階にエレベーターが到着した。そっと二人は外を覗く。最上階と異なり、一階は車の出入りが激しい。料金が低価格なのかそれとも、立地条件の優位さによる活気であるかは、鈴木はわからない。しかし、景色の動きは、逃げる側の心理として都合が良い。一台のSUVが出口に向かって徐行、鈴木と相田はフロアに出て、その車と平行に移動する。時折後ろを振り返り、早足で車と並ぶ。助手席の女性と目が合う。いつもなら見つめていられない女性の目もにこやかに笑みを送れた鈴木である。女性は顔を逸らした。

 通過ゲートまで到達。隣接する小屋に鈴木から先に駆け込んだ。中には二人の警備員の姿。

「警察です。電話をお借りしたいのですが」鈴木が声を張り上げて言った。突然の出来事に警備員たちもあっけにとられ体は硬直、直立。「電話!電話です、電話はどこですか?」その問いかけでやっと警備員はデスクの受話器を指し示した。

 鈴木はO署の熊田に一方を入れた。部署内の電話に出たのは種田で、彼女を通じ熊田に情報が送られた。二人の関係性は詮索しても決まりきってる。男女の仲に発展するとは万に一つ、いいや億に一つの可能性。それでも僅かな可能性は捨てきれない。もしもと言うこともありうるか。鈴木は非常時に冷静な判断が下せていると自分を評価した。余計な事を考えるべきではない、集中するんだ、そう教わってきた。でもそれは、間違いで、リラックス、安定的な精神ではいくつかの考察を一度に走らせられる。気づいていないだけで、手を動かしながら、視覚もそれに感度の弱まった聴覚だって使っている。

「鈴木、出るぞ。居場所が知られる前に地下鉄に乗る」ドアの隙間からフロアの様子を伺う相田は緊張の高まった、張り詰めた声で行き先を指示。

「ちょっと待って下さい、あのここにですね……」鈴木は警備員に耳打ち。相田が急かす。

「早くしろよ!」

「はい、それならこれを……しかし、鍵が……」判断に迷う警備員に鈴木は耳元で必ず警備室に常備しているであろう品物を警備員に告げる。たじろいだ警備員、目が泳ぐ。しかし、鈴木は特別今回だけ、見逃しますよと直接言葉には出さずに、表情でそれを伝えた。感じ取った警備員はナイロンの工具入れから金属のへらを取り出した。思ったとおりだと咄嗟に思いついた考えの合致に顔がにやける。へらは背中、ベルトに挟んだ。相田はドアに張り付いて、室内に背中を見せている。

「車種は?」鈴木は端的に尋ねた。主語がなくても応えてくれるはずだと思っての発言である。

「アップ」外車か。

「相田さん、急ぎましょう」無造作に扉を開けた鈴木がフロアを斜めに縦断。後方の相田が叫ぶ。

「どこ行くんだ!出口はこっちだろう」鈴木は振り返って言った。

「これに乗るんです」

「なに?」

「だから、これに乗るんです」

「どうやって、中に入れないと車は動かないぞ」

「それは、じゃやじゃーんこうするんですよ」

「……泥棒」