コンテナガレージ

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あちこち、テンテン 6-4

「生活のためにのみ生きている、息をつなぐのは苦しいことだと知っていながらも、やっぱり生活は大事か?」私の声だ、少女の口からは宅間の声が聞こえる。どうしてだ?状況を見込めない。私は話してはいなし、聞こえたのは少女の口からだ、間違うものか。音が反響したと思えない。機械的に収録した音?いいや、滑らか過ぎる。笑っている少女。動かないのに、生きていて、それは私の声色で話しかける。異質。幻。昨日の寝つきが悪かった、もしかすると夢かもしれない。窓口の椅子で私は眠っていて、無理な体勢だから恐ろしい夢を見させて起こそうとしているんだ。
「なにをいっているんだい。君、学校はどうしたの?」精一杯の受け答えだった。けれど、相手の笑みは消えない。蛍光塗料だったようで、かすかな暗闇でぼんやり傍らに立つ少女が光を帯びている。光沢の笑み。後光が差したような仄かな明るさ。
「枠にはめたがるのは大人の悪い癖。海外では飛び級という制度によって頭脳に応じた進級制度が設けられている。私が平日の昼間に都会の中心街を歩いているのは、あなたからの局所的な観測でしかないのよ。わかって?」かしげた首は、古典的なお嬢様、そう執事でも控えている人物を想像させた。