コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 5-16

「人それぞれで反応は違います。警察は私たちよりも見慣れているから言えることで、もしも急に人が倒れていたら驚いたり、助けようと方法を迷ったりするのが普通。近くにたまたま警察がいたとしても、気が動転して頭が回るとは思えません」気の強い館山が国見をフォローし、切実さで熊田の指摘を跳ね返す勢い、気概で対抗した。

「あなたは、少女の死亡をあらかじめ知っていたのではないですか、国見さん?」国見を掬い取るように熊田が見つめる。彼女は横に力なく振られる首が精一杯の応え。

 女性刑事の種田は、固定カメラのようにその場を動かない。後に見返すための記録を残しているようにも見える。目が合い、店主は目配せをする。彼女は真意を測りかねて、目をそらす。恥ずかしさではないと店主は思う。

 短い息を吐いて店主が話す。「少女の死因は?」

「調査中です」きっぱり種田が侵入を拒む。

「判明した範囲で結構です」

「お話しする義務はないとおもいます」

「こちらに話を聞いておいて、そちらはだんまりというは、少々ぶしつけな態度とは思いませんか。仮に彼女が少女の死に何らかの係わり合いが存在していたとしても、私には店の周囲で起きた事件あるいは事故です。営業を妨害された私には少なくとも出来事の概要を聞く権利は発生するのではないでしょうか、刑事さん」従業員を庇うというよりかは、店の権益を僕は主張した。これが第一で店の経営悪化はひいては彼女たちの労働対価の未払いを招きかねない、と店主は言い訳がましく自己分析した。

 歩きを止めた熊田が問いに答える。「共犯者の疑いが晴れるまで、詳細な捜査状況をお伝えすることはできないのですよ。申し訳ありません。あなた方を疑っているではありません。これは仮定の話です。初動捜査では断定的な、感覚の捜査はここでは許されない。正直いいますと私は別件を調べていて、ここは管轄外なのですよ」

「初見を知りたいなら話してやってもいいだろう」鑑識の神がふらりとドアをくぐって店内に足を踏み入れる、天井の鈍い黄金の照明を眺めていた。ノスタルジィの想起だろうか。

「神さん、終わりました?」実はこの神も管轄外の仕事に借り出されていた一人で、所属は隣町O署勤務である。

「途中だったら、ここへ来ない。あっと、店長さんだけかその髪の短い人」店主は呼ばれた。

「はい」店主は顔の辺りまで手を上げる。

「ここでタバコが吸えるかね?外の歩きタバコは罰金が取られる、携帯用の灰皿も対象に含まれるそうなんだ」