コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 8-2

 不毛な会話を繰り広げて熊田と種田は指定された場所へ移動した。O署からは約二時間のドライブ、運転手の熊田は珍しく高速を利用し目的地周辺で一般道へ下り、郊外のショッピングモールへ車を止めた。屋外は強い日差しにより暖かく感じたが、風が吹くと冷たい。二階のフードコート、目印はPC。あれこれと場所の指定までを求めた人物の慎重さの理由が思いつかない。証言をすることによって何らかの被害をこうむると思っているのだろうか。それならば、証言には応じないはず。熊田の歩行速度が遅くなる。しかし、嘘の証言だったら辻褄が合う。警察の求めを否定すれば、ますます疑いが強くなる。であるならば、堂々と作り上げた証言を話せばいいのだ。偽証の罪に問われそうにならないよう、あらかじめ記憶はあいまいで信じるに値しないと言い訳を匂わせおく。記憶は劣化するものだと、我々が一番良く心得ている。些細な見間違いは日常茶飯事、完璧に覚えている人は早々出会わない。エスカレーターで二階へ。
 外国のツアー客が聞きなれない言語で通路を占有する。なにやら、ツアーガイドらしき女性が、時計を指差し時刻を示す。集合時間を知らせているのだろう。人の波が散らばる前に、人ごみをすり抜け開けたフードコートに足を踏みいれた。種田は無言で背後をついてくる。目的の人物は一目瞭然で目に飛び込んだ。窓際の一人席にシルバーのPCが見えた。
「すいません、三神さんでしょうか?」
「はい」男は眠そうな目で返答。熊田、種田を順番に捉えた。「警察の人ですか?」
「先ほど連絡を取った者で、熊田といいます。そっちは種田」
「どうも。席をひとつ空けて座ってもらえます?」警戒している。熊田は素直に提案を受け入れた。種田も従う。「何か食べるか飲むかしたほうが、あやしまれません」
「種田」女性に飲食の提供を頼むのを熊田はあまり好意的にはみていないから、少々種田への投げかけを申し訳なく思った。しかし、意外にも種田はすんなり立ち上がった。
「コーヒーを買ってきます」
「すまん」
「仕事用の電話で女性の声を聞いたのは久しぶりですよ。ここ数年担当編集はみんな男でして」口火を切ったのは三神であった。口調は軽くしかし、作り込んでいるあるいは本心をさらしたくはない弱さによる演出の態度に熊田には映る。