コンテナガレージ

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空気には粘りがある4-3

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 数時間前に止めた道路に設置された白い枠の駐車スペースが運良くまた空いていた。車を止めて外に出ると、ビルの影が車ごと鈴木ごと包んで、ひんやりと感じた。時間は30分前、携帯をポケットに仕舞う。クリニックの隣のビルがちょうど交差点の角、一階には原色一色のドラッグストア。交差点の赤信号を待ちつつ、きょろきょろとあたりを見やると、向かいの通りに喫茶店を見つける。鈴木はそこで時間をつぶすことにした。

 窓際の通りを見渡せるカウンターに腰を下ろしてコーヒーを注文。タバコが吸えるかを入店時に聞いていたので戸惑うことなく煙草に火をつけた。一見すると灰皿とは見まがうようなおしゃれな白い湾曲した薄っぺらい陶器に灰を落とす。二本目の煙草で熊田から連絡が入った。

 内容はこれまでに得た情報のやりとりと明日以降の行動の簡単なあらましを伝え合うというものである。鈴木から新しい情報は何もなかったので、気が引けていたが熊田からは行動に対する規制や罵倒はなかった。反対に熊田からは鑑識からの追加報告が伝えられた。被害者の早手亜矢子の死因は頭部を硬度な物質によって叩かれたことによる脳挫傷との見解であった。その他全身の擦過傷は、死後に付けられたと判明。現場に車から落とされて付いた可能性があると熊田は言っていた。

 鈴木はぼんやりと外を見つめていた。疲れていたのだろう。うつらうつらと眠気が襲ってきて、記憶がとんだ。頬杖から顔ががくんと落ちて、目が覚める。ヒヤッと背中に冷たいモノが走る。携帯で時間を確かめると、3時55分である。大慌てで立ち上がり、レジで会計を済ませると青信号の点滅にギリギリ滑り込みでなんとか時間内にビルへと姿を消した。喫茶店に残された残りの煙草は、煙がとっくに止んでいて、フィルターとの境界が綺麗に線引きされていた。