コンテナガレージ

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がちがち、バラバラ 5-13

 数秒間、店主を穴が開くように見つめて、館山は瞬きを数回繰り返すと本来の機敏さを取り戻し、一度壁のもたれる少女を見てから、こくりとうなずき隙間に消えた。

 一分も経たない間に空間がさらに狭く感じる。制服警官が一名と鑑識の人間も一人だ。制服は警官になりたての若々しさが頬のふくらみと肌の張りに見て取れる。満ち溢れる若さは、体力面での心配はないにせよ、なぜか法に遵守した権力を彼らが振りかざすと途端に、危うさと稚拙さを感じてしまうのは僕だけだろうか。一方、鑑識の紺色の制服を身にまとった白髪の人物は、つばを後方に追いやって帽子を被る。被るよりも頭に乗せると言い換えたほうが正確。制服警官は克明に発見時の様子をメモに記録していた。初めての殺人現場それも二件続けての短期間での捜査に、高揚を隠しきれないでいる、そんな横顔であった。遺族にしてみれば、不謹慎でも、彼はたんに一定で刻んだ生活、仕事のリズムが乱れ、それらの対処に体が興奮を副次的に作り上げて対処に望んでいるだけで、死を軽んじているんのではない。しかし、先ほど述べた若さに興奮がプラスされると、直感的な印象はやはり、軽く事件をまた非日常の事件を楽しんでいる姿が投影されるのだろうと、店主はしゃがんむ鑑識の背中へ視線を落とし警察の初動捜査の進行過程を見守った。風が吹いて、室外機がもたらす熱風が渦を巻いて顔の辺りをさらった。

「死体にはさわっとらんだろうね?」鑑識の男は、死体であると断定した。

「生死の確認のために、首筋に触れました」店主は正直に応えた。

「その手袋をはめて触ったのかい?」

「ええ」

「一応、証拠品として回収するけど、いいかな」

「構いません」

 鑑識がもう一人やってきた、女性である。社会への体裁を込めて意外な職種に女性が登用される。女性を数多く採用しないのは、能力的な違いではなく、やはり結婚と妊娠による退職が主な要因だろう。大きな組織ならば、影響は少なく、結婚後または出産後の通年の勤務にフレキシブルな体制が導入、固定した時間内での勤務と長期休暇の安易な申請も組織が率先してリードする。ただ、それ以外の組織にいたっては、女性の登用はやはり数に限りを設けるしかない。どこかの店とは正反対の体質。相対的な年齢の若さ故にまだ問題に直面していなだけなのかも。

 鑑識女性は男性の指示を仰ぎ、また通路に消えて、再び現場と化した店舗裏手の狭い空間に、今度は直方体のバッグを肩にかけて戻る。密閉性の高いビニールの袋、店主に対し手にはめた手袋を渡すように促す。

「気分悪い」口を押さえ、館山は現場から離れた。その言葉に呼応してか、現場の空気が一変、廃墟を訪れたようなうっそうと生える木々と朽ち果てた建造物の対比がかもし出す、空間のゆがみに似た感触が襲う。僕は廃墟を訪れたことはないが、空き家の雰囲気を増幅させると見えてくる情景と匂い。