コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?1-4

 そんな事を考えつつも、彼女は平気で二時間を過ごす。周囲は彼女以外複数で来店している。コーヒーも空だった。空腹を覚える。通路を人々がたらんらんと休日のスピード。またスイッチが押されたみたい、自分で制御できないのが難点だった。わかっている、昔のことだって。しかしやでも、が私を記憶に引きずり込む。栄養が足りていないんだ。思い込め。朝食は口にしていない、一杯の水と飲み干したコーヒーだけ。頭を回すんだ。立ち上がる、カウンター脇に、カップを提げた。私が座っていた席を片付ける店員がすれ違いで、ありがとうございますと言う。振り返り、私の席が拭かれていた。まるで、掃き清められたみたい。そうではないと頭ではわかっている、けれどどうしてか、悪い方へ悪い方へ考えが及んでしまうの。店を出た。店員の笑顔と挨拶に答えられないのだって、私は自分に刃を向けたのだと思ってしまう。

 追い討ちをかける出来事がさらに私に降りかかった。店長が女性と連れ添って前方から歩いて来るではないか。私は咄嗟に背中を向け、歩き出した。そちらに用はない、施設内の地図はおぼろげながら覚えてはいるけど、でも突然の不意打ちでパニックを起しかけている。いや、十分混乱している。とにかく、見つからないように角を曲がった。しかし、その先は行き止まりで、左右に並ぶ店も、補聴器やクリーニング店、靴の修理、鍵屋と私にはまったく縁のないしかも、ふらりと立ち寄れる店ではなかった。歩調を緩め、首をゆっくり恐る恐る後ろに向ける。ちょうど、二人が通過するところだった。女性の顔が見えた。ワンピースに涼やかな帽子。背が低くて見上げる形が定常なようだ。店長が私には見せない顔で笑っていた。顔に皺を作り、目がなくなる。数秒は停止していたと思う。だけど、私を不審に思っても誰も声はかけない。石ころみたいなものだ。そこにあっても不思議でも異物でもまして透明でもないんだから……。