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自作小説-WとG

帰国便 機内 瑣末な出来事と現象~無料で読めるミステリー小説~

day 1 先週かな?大変失礼な行動に出てしまった、お詫びします。どうかしてしたんだよね。思い出して青ざめたんだ。図々しいだろうし、私を訴える権利があなたにはある。もし許されるんだったら、そのぐらいの気持ち。突っぱねてもいいだろうから。まあ、あ…

帰国便 機内 瑣末な出来事と現象~無料で読めるミステリー小説~

「私にですか?」「お断りをしたのですが、どうしてもと、知り合いだから、とおっしゃるもので……」眉根を寄せる客室乗務員田丸ゆかは非礼を承知で、しかし託されたお客にもそれなりに丁重に扱う義務があるらしい。「返事を期待しないこと、手紙の始末は私の…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 5~無料で読めるミステリー小説~

ガラス張りの喫煙室越しに、薄く曇るシャンデリアを眺めた。 何かのために殺されたのだと仮定すると、掘り起こしてはならないのかもしれない……。 三本目。 これを摘みかけると、人が飛び込んできた。厄介な場所への誘い。 壇上で、挨拶をした。手短に済ませ…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 5~無料で読めるミステリー小説~

「彼の成り立ちは戦後の復興期に事業を起こし、歴史が動き出しただろう?資本主義のベースを工場機械の製造とその機械となる材料、素材の加工だ、世界での生き残りにはまず体力の増強が求められた。生活が潤うと人は次のステージを目指す、まだまだ列強大国…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 5~無料で読めるミステリー小説~

駅。端末は最短のルートを教える。複雑に入り組む都内を衛星の頼りなしでは歩くことがままならない、失われる機能はいずれ感覚器官の変質につながり、その他の機能で補う進化の道をとるか、はたまた退化を選ぶのか、アイラ・クズミはビルと住宅地が押し合い…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 4~無料で読めるミステリー小説~

写真はすぐさまリュックにしまわれた、チャックも閉まる。「死体の人物の身元は依然として明らかになってはいない。一方あなたは知っている、表情は嘘をつかない」「参ったな。結構貴重な情報だと思うんです。そうやすやすと……」種田はすごんだ。男女の仲を…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 4~無料で読めるミステリー小説~

「警護はもう終わったも同然です、脅迫状が届いた訳でもないですし、本人の神経が過敏になってるらしく、近くで見張っていることを近場の常駐のスタッフに君村さんを時々見張るよう頼んでおきました。多めに手渡したので、それなりに働いてくれるとは思いま…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 4~無料で読めるミステリー小説~

K第二公園は都内の南西に位置、かつて大学だった校舎を含む構内に会場、ステージが組まれる。講義棟は正門を入り数百メートル先に点在する、建物の高さはまちまちである。複数の学部を要した大学、これでということが窺えた。構内図では正門を南に北東の隅…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 3 ~ミステリー小説~

どっと、葉巻の煙が顔の周りを取り巻いた。髭の男性は紳士よろしくわずかに顔を振る、上下に、そして髭に隠れる小さい口を開く。「模倣、ははは、これは予見されましたな。対策はいわずもがなの放置、迎え受けるは精微と対応力にリーズナブルな価格。国内に…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 3 ~ミステリー小説~

3 息遣いがそっくり跳ね返る歩道に二度目の気配を感じ一人であることをあきらめて認めろ、説得と教示をかき混ぜた町の息吹がビルの窓、建物のドアが吹きかけ押し出すかのようで、都内の春はひどく生暖かい。 指定された住所に到着し階段を上る。何者に反応…

JFK国際空港内 控え室 ~ミステリー小説~

最寄り駅。走る。暗い地下、古びた階段、かんかん、かつかつん、古風とは異なる趣。 風を味方に車両が颯爽、搭乗。 寄せる視線を跳ね返す、譲られた席はアキに譲る。 下車。駆け出す。スタジアム。野球観戦は人生において未経験だ。とりあえず、入り口らしき…

JFK国際空港内 控え室 ~ミステリー小説~

「事件についての質疑は終わりましたか?場を和ますブリッジにしては長く、そして多用が目立つ」「それではもうひとつだけ」色が変わった、気配のコントロールを身につける人物特有の重厚な威圧を放つ。「その若者は、突然始めたあなたの予期せぬツアー先行…

JFK国際空港内 控え室 ~ミステリー小説~

「一つ」アイラは指を立てる。「特定すべき証拠が見つかっている。二つ、死体発見の一報を受けたあなた方は空港で私たちの搭乗機を迎える時間内に確からしい証拠、あるいは確証に近い状況証拠を集め、検証を以って逮捕に踏み切る予定であった。三つ、これは…

JFK国際空港内 控え室 ~ミステリー小説~

「安全性の見当は十分に協議と検証を行ったうえで、本搭乗に踏み切ったのか?」ぶっきらぼうな言い方は通訳の標準的な日本語習得レベルの低さに由来する。風貌からして、思慮が足りる、聡明な人物とは言い難いが、決め付けるには材料が不足してる。よって、…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2 ~ミステリー小説~

「……はい」「十和田さんでしょうか?」「そっちは?」「O署の種田です」「ああーあ、刑事さん。どうもっ」「正午までにそちらに向かいたいと思いますが、事務所におられますか?」「おられませんね。帰れないこともないですけどね」「現在はどちらに?」「…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2

「……はい」「十和田さんでしょうか?」「そっちは?」「O署の種田です」「ああーあ、刑事さん。どうもっ」「正午までにそちらに向かいたいと思いますが、事務所におられますか?」「おられませんね。帰れないこともないですけどね」「現在はどちらに?」「…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2 ~ミステリー小説~

「発言をしてしまう予定であったならば、事前に山本西條からmiyakoに死体の事実を教えることは必要だったのでしょうか。可能性としては彼女が発言に至る、喫煙の秘密をmiyakoが握ってから遅れた開演までのこの間に該当者に向けた働きかけ、アクションが起き…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2

「帰りも搭乗客が一まとめに帰ってくることがわかって、アメリカで自由行動が許されたのは、冷静に考えると一人一人に見張りがついてなくちゃですよ」鈴木は言う。「だって、そのまま現地で一生暮らす覚悟を持つと、帰国便に乗ってです、おめおめと日本警察…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2

仲良くテーブルを囲う早朝のビジネスホテル、朝食にありつく。 航空会社jafは機長及び副操縦士の個人情報の提供を拒んだ。この二週間は地道に彼らの周辺捜索に費やされた。両名は体調不良を理由に帰国後の勤務はすべてキャンセル、疑いが強まった。糸口はい…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB  1

「ある方の依頼を受け、あなたが主催されたツアーの内容を調べております」キクラがいつも座る肘掛とキャスターのついた椅子にアイラは座る、十和田へそれまで腰掛けたソファの端に座ってはどうか、と彼女は手を差し出した。彼を見上げる。「出版関係から漏…

犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 1

山と積む段ボール、届き始めた原稿の第一陣、その認証を待つ一通一通がこれでもかと分厚い封筒のチェックにカワニは追われ事務所に篭りっきり、スタジオはいつになく平穏無事で単純な毎日が始まり終わる、一階ロビーの警察との予期せぬ面会から二週間を経た…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

種田は改めて口を開こうとした。が、通話は聞こえていた、熊田は一度頷き表情を固く、対して君村ありさは得意げに顎を数ミリ引き上げていた。「満足したらとるべき行動は一つ、私ならとっと尻尾を巻いてこの場を逃げ出す」勝ち誇った横顔で君村は栄養を流し…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

「では、チケットの入手方法を教えてください」やんわりと熊田は次の質問を述べた。なるほど、と種田は感心する。本題を二つ目に、重要そうでありつつ実は程度の低い質問を一つ目にぶつけた。相手が油断した隙をしかも相手が作り出してくれる。懐に用意に入…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

ノックを拒むドアを熊田はこともなげにそれこそ自動で開く店舗のドアとまるで瓜二つの扱いをやってのける、三階Bスタジオ。 室内は君村ありさが一人でソファに腰をかけていた。体面の側に二人は座る、ちょうど入ってきたドアが見える。「アイラ・クズミさん…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

「何で僕ら建物を出ちゃったんでしょう、君村ありさのところについでに戻ってるか確かめてもよかったんですよね」「怪しまれる」「なるほど、考えてますね相田さん。やっぱり一眠りした後は頭の冴えが違うなぁ」「どうとでもいえ。反論を期待する奴ほど怒り…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 8

「貨物室から出てきたのでしょう。単純な計算です、機内に代わりの人物はいて、しかし、お客、客室乗務員の視界には入らなかった。貨物として迷い込んだ。演奏が遅れたことは予想外だったでしょうか、吸引用の酸素は携帯していたでしょうし、貨物室内では荷…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 8

「僕らのことを避けてました?」「避ける行為はこちらに、避けてしまえるのはあなた。あなたからすると、私に避けられたのでしょうね」「つまりですよ、今のお話を聞くとですね、君村ありさは機長が何者かにより殺され死体となって荷物棚から転がり落ちた。…

機内 早朝 ハイグレードエコノミーフロア

「……私たちの断定が死体を作り出した。単なる精巧な偽者を、魂の抜けた人間と言い張った」目が覚め体が起きると寒気が襲う。それだけ体温の維持に欠かせない熱量を生むのか、眠っている、どんな気分だろう、やはり気にはなる、精神と肉体の分離を誰か教えて…

機内 早朝 ハイグレードエコノミーフロア

「私が目を覚ましていなかった場合を想定していましたか?」「まったく。たぶん起きてる、直感ですよね」私とカワニを呼び立てた威厳と風格をすっかり脱ぎ捨てる、取り外しが可能らしい。 黙る。話を進める役割を年下が担う決まり、そのような世界に生きる覚…

追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 7

「なぜ身分を隠して出演されたのでしょうか」濡れた路面を歩く、細い路地、すれ違う歩行者はこのあたりの住人には見えない。ラジオの出演中に雨は降って上がったようで、レンタカーのワイパーは発信時に視界を確保した数回の往復以後、活躍の機会は訪れてい…