コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 2

「お客様、ご利用時間を過ぎましたが、お客様ぁ」 (ドアを叩くも返事は確認ができなかった) 「プライベートを覗き見る趣味はわーたしにはありませんから」 (ドアが開ききらず約四分の一開いてつっかえる。抵抗が感じられた) 「前もってお伝えしておきまーす…

熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 2

「おかしい頭」、耳にこびりつく。 見たままを話してるさ、嘘つきのほうがこの世の中多いではないか。……私だけが割を食う。あのとき部屋を覗いたんだ、同じ人物に何度質問を受けたか、思い出すだけで打ち付ける鐘楼がけたたましく頭蓋が割れそうに痛む。 日…

熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 1

畑は台地にあったらしい、玉蜀黍畑を抜け視界が開ける、三メートルほどの坂を下って舗装された道路と一軒の商店に出くわした。高台の塀に沿って川が流れる、用水路にしては川幅が広い。予測するに氾濫した際の土砂が平野部に堆積、それらが隆起し不釣合いな…

熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 1

凪の薄緑と紺碧の小波と別れ、平野部とはるか遠くかすか山頂付近の霞を羽織る連なった山々に視界が切り替わる。正午前である。午前六時に美弥都は家を出た、平野部に入ってからはものの数十分で目的地に着くらしい、店長は宝の持ち腐れのナビ(午前中雹に見舞…

熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 1

「電車とタクシーを乗り継ぐ、それほど車移動に時間的な利得は見出せません。最寄り駅から歩くと思われたのですか?」日井田美弥都は店長の助手席に揺られる。 半ば強制的だった。 自宅から目と鼻の先無人のH駅に向かう矢先、歩道に出た所へ見慣れた車が颯…

レタリ-ピリカ-カムイ エピローグ

「見た限りその方は亡くなっておられます。回復の目処は立たず。治療の術を施すよりも埋葬の準備を整えましょう」「あってはならんのだ、ここで死なれては困る。いいからドアを開けなさい」喧しい。罠にかかった生き物の鳴き声。 睨みつけられた、横たわる人…

レタリ-ピリカ-カムイ エピローグ

三名の刑事と対し説明はこれで六度目となる、昨日の相手白髪交じりの男性は脇に控え立会う。この人に話してくれ、くたびれた首に巻きつける帯を緩め、つきっ切りそのの刑事がだるそうに黒く汚れた爪の先で指した。斜に構えた伊達男と席を替わる。室内は二人…

レタリ-ピリカ-カムイ エピローグ

人を呼んだ。 命令に従います、これといって別段変わった、不信な動きを匂わす兆候があったのでしょうか。 異界の者、皆がそのように捉えるから仕方がないのかもしれない。 部屋に一人、それから横たわる一人。いいや、一体と言うべきでしょうか。部屋の中央…

エピローグ

二週間後。 スタジオに雑誌が配送された、バイク便である。事務所に届き、アイラの所在地へ送られたのだ。 モノクロで一回り小さな彼女がいつになくこれまでを失った顔で笑っていた。 過去の話。 離れたギターに詫びを入れて、次の楽曲製作に取り掛かる。 デ…

エピローグ

笑みがこぼれた、めずらしく私が笑う。 彼らにも伝わる、この場では彼らは疑いようもなく私である。 見えている、生きているが、現物はたまに。しかも、初見の演奏は無自覚に私の本能を呼び覚ましてくれる、感じ取ってくれるだろうか、どれだけが、反応を示…

エピローグ

目配せ。もっとも右端の私、その左斜め後方に長髪のギタリスト、ならびにもう一人ギタリストは短髪を固める、ベースのクールガイはサングラスで武装、軽く顎を引き、どんと構えるドラムスは大き目のメガネフレームを直して、スティックをくるくる回す。 カウ…

余震が続く7日の朝

6日胆振地方で起きた地震の影響により、今まで電気が使えませんでした。 ようやく、電力が復旧し、方々へ連絡。この記事を書いています。 昨日と今日は、ラジオの情報に頼っていました。スマホやパソコンは使えなかったので、押し入れにしまっていたラジオを…

エピローグ

ブースの外で腕を組み、見守る人物たちの総数は圧倒的に作業に忙しい者たちを上回る。 「ニホンゴ、ワカラナイネ。アナタ、ハ、ウタエ」ギターの男に肩を叩かれる。 「オーケー」十分だ、ネイティブの日本人だって会話の文法はめちゃくちゃなのだ、伝わる。…

エピローグ

十一月中旬、うらぶれる空が雪を降らせた翌日。アイラ・クズミが借りるスタジオにて生放送の収録が行われた、カワニが私の承諾を半ば強制的に勝ち取った二週間後である。海外からの出演者を、アイラ自身はまったく知らない。周囲の反応は彼女とは正反対に緊…

単一な黒、内面はカラフル 2

希少な露出を誤って受け取る人が大多数、ただし、うん、観客たちは常にふるいにかけられているのは事実だ、こちらは続けるべき。 次の仕事が待つ。東京は暖かいだろう、海洋性の温暖な気候が冬でも比較的高い気温を保ってくれる。 大雪に見舞われる都会の風…

単一な黒、内面はカラフル 2

もっとも二件目が一件目を補完し、その他がその二つを更に補ってしまった。既に打つ手なし、警察にも言ったことだ。そう、これ以上の詮索は不可能であり、無意味なのだ。警察たちの脳裏には連続殺人がびっしりとこびりついて離れないだろう。 喉元を過ぎる液…

単一な黒、内面はカラフル 2

アナウンス、意図的に感情を殺す機械的な声が車内を包む。しかし、降りる仕度に取り掛かる乗客の姿は見られなかった。新幹線は遠距離を短時間で移動する手段、近距離ならば時間をかけた低料金を選ぶはず。 時間と距離の関係性が気にかかった。 アイラは音楽…

単一な黒、内面はカラフル 2

ええ、もうお分かりでしょう、データの観測がたまたま事件と対象を捉える、その点において共有性を帯びた、単にそれだけのことです。納得がいかないようですけれど、私は警察でも探偵でも、まして小説に登場する人物の明快な回答は持ち合わせない、そればか…

単一な黒、内面はカラフル 2

「お前の自腹が増えるだけだぞ」不破はアイラにきりっとした表情を向けた。「あなたは事件にまったく関心を寄せるそぶりを見せない態度だった、情報量は我々に劣る。後学のためにぜひおしえていだきたい、どこで事件の全容を悟ったのです?」変調を思わせる…

単一な黒、内面はカラフル 2

不破が頷いて言った。土井の見解には興味がないらしい。「アイラさんが言われた内容と事実は、うん、たしかに符合します」 「けど、不破さん。管理人の阿倍の身辺は綺麗なもんで、不審な口座の送金もメールやネットの書き込みも犯行を疑う要件なんてこれっぽ…

単一な黒、内面はカラフル 2

「では、一件目はやはり管理人の仕業ですか?」細い目で不破が尋ねる。 「どちらに転んでしまっても、良かった」 「どちらって、あの」土井が今度はきく。「自作自演以外の状況があるとでも?」 「本当に犯人と鉢合わせた」アイラは軽く微笑んだ、必死な彼ら…

単一な黒、内面はカラフル 2

コーヒーは有難かった、アイラは素直に受け取る、これの代金分を喋ると思えばいいか、彼女は小さじ一杯の量を口に踏むと、備え付けのホルダーにおき、快諾、リクエストに応えた。 「一件目の事件それのみだと解決に導く糸口は視認できませんでした。二件目の…

単一な黒、内面はカラフル 2

「紫に始まり、青、緑、黄色、オレンジ、そして赤。これらの色は重なると、黒を作り出す。すべての色が吸収され、反射した、目に見える色が黒。要するに、最後の赤色とは、自分は色の一つであり全体を現す色でもある、との主張が読み取れる」 「うーんん、い…

単一な黒、内面はカラフル 2

佐賀県警の刑事土井が腰を浮かせると共に驚きの声を張り上げる。即座に隣の刑事不破に頭を叩かれ、席に沈む。車内は多少、ざわついた程度で再び微振動と眠りを誘う走行音に主導権を快く手渡した。土井はそっと音量を抑えてきいた。丸い手を口元に添える。 「…

単一な黒、内面はカラフル 2

いうなれば、受け継がれるうなぎのタレが我々。つまり、昨日の私はもう今日には異なる別の私によって書き換えられている。体と呼ばれる枠が歳をとり、内部の人格について規則的な改変が絶えず行われ、無意識にあるいは意識的に、『自分』を忘れてしまわない…

単一な黒、内面はカラフル 2

「あいまいな機能の働きと記憶を取っ掛かりに、当事者はアイラ・クズミに介在するべく、この作用を逆手に取った。アイラはその性質上、瑣末な事情に靡かない、クールな人格を持つ。通常みられる代わり栄えのしない接触では当事者の存在は忘れ去る、ゆえにラ…

単一な黒、内面はカラフル 1

不本意。はい、前の方とアイラさん両方の願いを叶えるつもりが、当てが外れたのです。落ち込む必要性に囚われるな、現実に存在を認められはしないの、チャンネルを変えなさい。真実に姿を似せた寄り添いは、身に降りかかる事態の処理に目を塞ぎ、途方にくれ…

単一な黒、内面はカラフル 1

本来この席に座る人物は私を除いた人物があてはまる、未来というのは可変しても未来、つぶさに予測と見比べ、違いを見つけることをあなた方に求めます、これは酷な期待ですかね。手紙は私が手渡しで受け取った。はい、つまり私の前に手紙を書いた人物がいた…

単一な黒、内面はカラフル 1

『あなた方へは労力に対する敬意をお辞儀で支払う。もっとも、私が捕まるつもりでこの手紙をしたためたことと勘違いされるのは、不本意極まりない。予測はしていたけれど、現実に起こる可能性は万に一つの割合に思っていた、まあ、そのわずかばかり、すずめ…

赤が染色、変色 11

演奏を止めた観客が引き起こした活動の説明はあえて、伝えずに継続を保つ。 見回す観客の両目に一セットずつ、同意を取った。 その間に、女性は席に座り、ペットボトルの水を与えられる。青ざめた頬の血色が少しだけ戻っていた。 時計をちらり、限られた時間…