コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

がちがち、バラバラ 7-1

アルコールの抜けきらない体を騙し騙し、職場に出勤。夜勤組みと交代。顔色の悪さを指摘される。宅間隆史は休憩時間まで気を張りつつも体調は優れない。だが、仕事はそつなくこなし昼休憩の一時間を睡眠に当てることで今日を乗り切るつもりであった。 上着を…

がちがち、バラバラ 6-8

「具体的に店を離れた時間はどの程度です?」熊田が煙を吐いてきいた。「時間にするとそうですね、順番が回るまで待っていたので五分、いや十分ぐらいだとは思います。防犯カメラになら映っているでしょうね、ATMの」「地下ですか?」「いいえ、店内です…

がちがち、バラバラ 6-7

「……場所を変えましょうか。ちょっと出てくる、十一時にはもどるわ」見習いの男に告げて、仕儀は刑事二人とたまに利用するカフェへ移動した。お客は一人、小気味いいタッチでキーボードを打っている。その隣に私たちは座る。窓際の席。「先ほどは失礼しまし…

がちがち、バラバラ 6-6

「水鉄砲が見当たらない、それはつまり少女が持っていなかったのではありませんか。私は見たものは水鉄砲のではなかった」「液体を貯めておける形状の所持品は発見されてないのです」残念そうに力なく熊田は応える。「警察は少女がもともと持っていなかった…

がちがち、バラバラ 6-5

「あっ、来ましたよ」見習いが言ったそばからドアが無造作に開かれた。二人の刑事がまた登場した。慌しい朝である。「おはようごさいます」男の刑事、熊田が率先して言う。「お時間をいただきたい」「唐突ですね」仕儀は笑う。開店時間直後に予約したお客は…

がちがち、バラバラ 6-4

「残念だけれど、あなたの指名の多くは少なくとも憧れが土台なのよ、あなたは気がつかないかもしれないけど、カットされるお客の顔を輝いた瞳をあなたは見ていないのでしょうね」もう一人の従業員の女性が出勤。男の視線が仕儀の背後の動きを感知して仕儀へ…

がちがち、バラバラ 6-3

鏡越しに出勤してきた従業員へ挨拶。店に戻り、今日の予約をチェックする。若手の見習いが表を掃き終え、戻りしなわざとらしく声を上げた。「なに、どうしたの?」仕儀は受付の予約画面を見つめたまま言う。若手の見習いは男で、バレリーナのように首が長い…

がちがち、バラバラ 6-2

だんだんと着せられていった。それを私は甘んじて受け入れ、私を殺した。あの少女はたぶん許された。赴くままに自我を押し通した。目立ちすぎたから標的にされたのでは。一瞬、「自業自得」、内なる声が奥底から届いた。流行の服を着ていた彼女は見せたい衝…

がちがち、バラバラ 6-1

通勤の地下鉄。夏でも朝でも晴れでも地下鉄の明かりは後発の路線では深部のホームに近づくにつれてその威力をまざまざと見せ付ける。運良く席に座れた。仕儀真佐子は隣にちょこんと座る制服姿の少女を盗み見た。彼女は、端末を操作、画面はパズルゲームのよ…

がちがち、バラバラ 5-20

シートに包まれた少女が担架で運ばれていく。かぎつけたカメラマンのフラッシュが頭上からたかれた。ビルの二階、落下防止用の窓のわずかな隙間からカメラと手首を差し出して撮影していた。殺された人間にならばカメラの撮影は無神経、しかし、有名人の葬式…

がちがち、バラバラ 5-19

「わかりました。ご要望にはできる限りの配慮をほどこします」 「受け入れて良いのですか?」種田は冷たい目で熊田の受け入れに文句をつける。熊田は両目を軽く閉じて肩をすくめた。警察の間ではかなりポピュラーな表現手段らしい。 「ああ」熊田は一言そう…

がちがち、バラバラ 5-18

「店の裏手は頻繁に行き来する場所ではないと思われますが、いかがでしょうか?」 店主が話す。「ほとんど行きません。ゴミは店内で補完しています」 「被害者の顔に見覚えは?」従業員は皆首を横に振る。店主は種田に見つめられてから否定した。 「所持品の…

がちがち、バラバラ 5-17

「カウンターの灰皿をお使いください」 「ありがとう」カウンター、ドアに近い席に座り、足を組んで神はおいしそうに煙を吸う。「額に銃創を見止めた。その他、外傷なし。綺麗なものんだ。服の乱れ、汚れ、破損もない。寝かされた時に接地した面が汚れている…

がちがち、バラバラ 5-16

「人それぞれで反応は違います。警察は私たちよりも見慣れているから言えることで、もしも急に人が倒れていたら驚いたり、助けようと方法を迷ったりするのが普通。近くにたまたま警察がいたとしても、気が動転して頭が回るとは思えません」気の強い館山が国…

がちがち、バラバラ 5-15

もう一人の刑事が店に入ったところで、種田はその刑事に伝えるように聴取した内容を反復した。「国見さんが外の様子を見に行き、裏手で死体を見つけた。そして、店に戻り事情を伝え、次に小川さんとあなたが、死体を発見。そしてさらに、小川さんに呼ばれた…

がちがち、バラバラ 5-14

館山に警官が付き添い、離れる足音が鳴った。 「あんたが見つけたのかい?」白髪の鑑識が問う。 「店の従業員です、見つけたのは」口元にしわを寄せて鑑識の男性が立ち上がる。意外と身長が高いとわかる。僕自身の感覚も死体を見つけて麻痺してたらしい、と…

がちがち、バラバラ 5-13

数秒間、店主を穴が開くように見つめて、館山は瞬きを数回繰り返すと本来の機敏さを取り戻し、一度壁のもたれる少女を見てから、こくりとうなずき隙間に消えた。 一分も経たない間に空間がさらに狭く感じる。制服警官が一名と鑑識の人間も一人だ。制服は警官…

がちがち、バラバラ 5-12

目に飛び込んだのは、足をテディベアのように広げ、座る女の子である。事件の子供と同年代、嫌な予感が過ぎるがもう遅い。おそらくはとうに通り越して、僕の予想と小川のそれは確定。口元を両手で覆う小川を少女が見えない位置まで下がらせる。泣いているの…

がちがち、バラバラ 5-11

「朝から具合が悪かったの?」店主はきいた。もちろん、従業員の健康管理は僕の役目である。朝には必ず顔色と吹き出物の有無、隈や声の質などをチェックする。問題はなかったように思うが、彼女の様態の変化は明らかに体調不良を見抜けなかった僕の判断ミス…

がちがち、バラバラ 5-10

「何もしないというのは、まあ、半分正解だ。ほら、ほんのすこしサイズの合わない靴を履いていると、だんだん足に馴染んでくる。靴は履くときよりも、脱ぐときに違和感が襲う。これは靴擦れを起こさない、前提で話していると先にっておこうか。小川さんから…

がちがち、バラバラ 5-9

「ほうら見てください。店長のお墨付きですよ!」 「うるさいなぁ」お客のいない店内だから許される言動、やり取り。場面での切り替えはわきまえていると店主はあえて叱らない。普段の行いが言動に表れるだろうとは考えている。しかし、手取り足取りすべてを…

がちがち、バラバラ 5-8

食事の合間に事件の話を国見が主に聞き役で二人は会話を交わしていた。平日の昼間の事件の影響は各所に被害を持たした様相。女性の美容室もキャンセルの電話が殺到したそうで、キャンセル料を支払ってでも、断るお客の対応に追われ、予定表はすっかり今日の…

がちがち、バラバラ 5-7

「いいえ。とんでも。ランチは終わってしまったのですね、確認ですけど?」「よろしければ何かおつくりしましょうか?」「なんだか催促したみたいで。迷惑ではありません?」「迷惑ならば誘いません」率直な店主の物言いに女性の眉が上がった。「気にしない…

がちがち、バラバラ 5-6

「あっつ、とはい、ええ、もちろんです」彼女は上目遣い。頬が幾分ピンクに染まる。それも対象性のなせるわざ。色黒ならば赤みと判断するのは困難だ。「仕事の合間に、こちらに買出しに来る時間は確保できますか。勝手に抜け出すのではなくは許可を得ての話…

がちがち、バラバラ 5-5

「店長は、真剣に経営を考えているのか、遊んでいるのか、私、たまにわからなくなります」国見蘭の前職は飲食店の雇われ店長を十代の若さで務めていた。全国チェーンの系列店のアルバイトで彼女は入店、しかしその店は新規に開業した商業施設のレストランフ…

がちがち、バラバラ 5-4

「かなりひねくれてますよね」「なんか言った?」「いいえ、だた、あまりにもスケールの大きな話に膨らんでないかなぁと思って……」詰め寄られ追求に屈する小川は、しどろもどろ、それでも言葉を返す。「警察に証拠をもたらす行動力、原動力はつまりは善意で…

がちがち、バラバラ 5-3

国見はレジから両替用の小銭を小口の財布にありったけ詰め込む。もどった小川は鳥にさらに焼きを加え、出来上がりの鶏肉を館山が食べやすい大きさに切り、店主が持った発泡剤のトレー、詰めたご飯の上に乗せる。副菜は酢を効かせたナスのマリネ。ご飯と鶏肉…

がちがち、バラバラ 5-2

警察の現場検証と証拠採取により封鎖された店は陸の孤島と化してしまった。手を打たなければ。店主は、ぼんやり外の様子を眺める外面を従業員には見せておいて、状況の打開を目指す手法をめぐらせた。 片方の目を開ける。外を見て、雨の有無を確認。外に出て…

がちがち、バラバラ 5-1

閑散、BGMが店内の主役に平日のランチ真っ只中において悠々と優雅にそれでいて力強く、かつ繊細に細部に響き渡る音質。店舗の契約を済ませた後にスピーカーという高価な副産物の在り処を知り、店内にプレーヤーに忘れ去られた歌姫の楽曲を初めて鳴らしたとき…

がちがち、バラバラ 4-6

「行動に示さないと意思は伝わらない。誰かが言っていた」彼女に気おされて、三神はかろうじて言葉を返した。周囲の人間にもおそらく聞こえている彼女の音声に、表立った反応は見受けられない。「あるいて」音声を切って、彼女は口の動きだけで先を促した。…