コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

4 ~小説は大人の読み物~

~小説は大人の読み物~ 「それは交換のために果たす交換。つまり、もう一つ前に受け入れた条件を飲み、あなたが実行をした。あなたの要求は?」熊田を差し置いて種田が尋ねた。「空港の警察とはえらい違い。飲み込みが早いっていうのも考え物。凄みは恐怖ね…

4 ~小説は大人の読み物~

「入院先に押しかける?面会は許されてるとは思えません、それに個室だと入るのはやっかいです」「厄介だが、入らずにおめおめと立ち去ることは選択肢には据えてない、お前以外の三人はな」「熊田さんと相田さんはいいとして、種田もそうだって言うの?」「…

3 ~小説は大人の読み物~

こちらを気にかける視線を感じる。もっとも、彼女が例の機体に搭乗していた事実は既に世間の知るところなのだろう。生放送は延期となり番組の改編が行われた、取り調べの模様を放送する訳にはいかない、ラジオ局側は空港に関連したトラブルに巻き込まれ身動…

3 ~小説は大人の読み物~

T-GATEFMは倍以上の高さのビルとビルに挟まれる。 上司の熊田を先頭にO署の刑事たち一向は地下駐車場のエレベーターに乗り、直接目的階に赴く。地下駐車場の警備員に局内への入出許可を得る、通常は地下から目的階へは専用のエレベータでしか上り下…

公演一回目終了 十分後 ハイグレードエコノミーフロア ~小説は大人の読み物~

「根拠のない発言は害悪そのもの」アイラは言う、表情は曇りなく清廉を保つ。「あなたが身をもって示してくれたました、お礼を言います。殺された、という認識は極端な見方でしょう。もちろんわたしは医学的知識は持っていない。人は死んでいる、それは皆さ…

公演一回目終了 十分後 ハイグレードエコノミーフロア ~小説は大人の読み物~

アイラは拍手で迎えられた。カワニが後方の補助席で二人に詰め寄られていた、客前に登場した時の様子である。 この中に犯人がいる。一回目の観客たちは席に張り付く。立ち上がった者は私の目からは一人もいなかった、これは確かだ。席を立つ瞬間を見逃してい…

公演一回目終了 十分後 ハイグレードエコノミーフロア ~小説は大人の読み物~

「コールサインがでてますよう」楠井は尖った神経を逆なでしないよう柔らかな声がけ。むせ返る、涙で腫らす顔の客室乗務員はアイラの前の席で判断を決めかねていた。肌けた毛布に包まる死体、彼女はそれの注視を嫌う、はじかれた視線は一向に壁にかかる受話…

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「あの人の年齢から察するに未婚は考えにくい。ありゃ、不倫相手の恋人だろうね」 試聴は行わなかった。 通常の製作過程ではデモの出来上がりと曲の手直しはひと続きである。立ち返る視点が作品に与える影響を調べたのだ、短期的な注力には短期的な視点がそ…

2

ギターを手に取る。面倒であるし、不本意だ。しかし、これは仕事である。約三週間後が締め切り。たまに、期限に余裕を持って曲を収めると、改変を求められることはしばしばである。それも手直し、という次元を超えた、新品を作ったこともあった。ライブでは…

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「いやいや、楽曲製作の現場は何度かお邪魔させていただいたことがありましたけれど」すべてを話そうとする、"けれど"や"でも"に続く言葉のほとんどは前述を踏まえた、述べた事象を覆す内容。「昨日の今日で、とは驚いてます」胸に手を当てる仕草もどことな…

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「死因は、窒息死だ」種田は言った。「ん?どした急に」隣の相田が煙を吐く、そして訊いた。前の二人には聞こえないほど小音だった。「いえ、なんでもありません」 端末に熊田が出た。窓が閉まる、種田も気を利かせて風を遮断した。 短いやり取りが交わされ…

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天井、機内の天井は丸みを帯びていた、種田は数時間前の記憶を取り出す。「自殺志願者か」熊田が呟いた。車内に重々しい言葉が放たれる。彼の発言は鈴木、相田のストッパーの役割を担う。「種田の意見は?」困ったときにこそ私が指名される、子供のときの教…

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天井、機内の天井は丸みを帯びていた、種田は数時間前の記憶を取り出す。「自殺志願者か」熊田が呟いた。車内に重々しい言葉が放たれる。彼の発言は鈴木、相田のストッパーの役割を担う。「種田の意見は?」困ったときにこそ私が指名される、子供のときの教…

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1「謹慎処分の期間に旅行、しかも海外渡航に出てしまっていた。僕は知りませんから」「謹慎処分のきっかけを作った当人が放つ言葉とは思えないが、お前のおかげで大手を振って仕事は休めた」「しかし、揃いも揃って部署の面子が署外で顔を付き合わせる、ス…

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

ごそごそ、背の高い客室乗務員が背もたれの切れ目に揺れる。摩擦音も届く、毛布を片付けるのだ。 アイラは弦の張替えに意識を集中させた。「あわっ!」低い声が短く響いた。足元の乗務員が発したのだ。「……ゆか、ゆかっ、ゆかぁぁ」段階的に声が高まった。彼…

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

「開っか、っない」「手伝います」客室乗務員の制服が横切る。アイラは弦を待つ。窓から空が望めた。薄い雲の残骸が散らばっている。気圧が多少低いことを飲み込むと、ここは移動する地上と接する乗り物の座席に思える。負荷をかけて、どこへ行くのだろう、…

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

弦が一本、切れていた。 アイラは中央の座席を挟んでカワニと横に並ぶ「カワニさん、昨日の打ち合わせの、大まかな内容をお客さんにこっそり伝えてきてください」ギターを座席に戻した。窓側の頭上の荷物棚を開ける。左手には報告にやって来た客室乗務員、背…

意図された現象に対する生理学的な生物反応とその見解、及び例外について

公演一回目終了後 ハイグレードエコノミーフロア 肩が上下に動く、胸郭、横隔膜の活発な動き。鼻から息が漏れる。アキにギターを手渡す、トイレに入った。出てくるなりギターを受け取る。「着替えましょう。その汗では体が重いですから」機体中央部、アイラ…

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タバコを叩く、塊、灰は切り落とされた首のようにぼとりと、しかし音もなく、暗闇に溶け込み姿をくらました。 息と声を出す。当然、煙が混じる。「どちらから漏れた情報ですか?」アイラは厳しく情報の流出を記者たちに咎め、釘を刺した。漏洩の発覚は会見に…

3

煙をふんだんに吸い込んで空腹をごまかす。たしか財布に百円が余る、いつもは避ける甘いコーヒーを買おうか、幸い良心的な紙コップの自販機が一階に置かれている。アイラは思考を切り替えて、話題を変えた。 タバコを吸い切るまでに彼に聞いておきたいことが…

3

火をつける。手元がほのかに灯る。「いつもの面子、呼ばないつもりかい?」キクラが訊いた。彼はブラインドを閉めてドアを開けた、外のスイッチを押した席に戻る。よいしょっと、声が漏れる。ここの照明はぼんやりとほんのりと灯る。「出来上がった映像の修…

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夕日が差し込む廊下、突き当たりの窓を建物の許諾なしに通るオレンジに膨張した熱の塊が観葉植物の影を作る。押し開けたスタジオのドアを閉めた。名残惜しさ、恋しい廊下の絨毯を踏む。考え事をしていたアイラは数メートル先の人物を見落としていた。通常な…

アメリカ行き〇八一便 チャーター機内 離陸後三十分 ハイグレードエコノミーフロア

楠井にマスクを手渡す客室乗務員は眉を上げた。二度おおげさに瞬く。「私が……、でしょうか?」そして鼻の頭に人差し指を指した。「安定度の高い脚立に私は座って演奏をします、身長の低い女性などは私の顔が見えにくいでしょうから僅か数十センチの高低差の…

アメリカ行き〇八一便 チャーター機内 離陸後三十分 ハイグレードエコノミーフロア

「伝達事項は以下の通り。まず先頭のビジネスクラスが舞台。制限時間を設けます、いつも通りに。ですので、客室常務員の方に計測係をお願いします、他の仕事に差支えがあるようでしたら三人の誰かがその任務を請け負う。大まかな時間の区切りを分かりやすく…

2

頭が上がるのを待った。上げてくれ、とは了解を意味しかねない。薬師丸の疲労の蓄積を待った。タバコを吸えたらと、彼女は暇を埋めるアイテムを欲した。遠方で高い音が鳴る。金属音。「映像は事務所、いいえスタジオ宛に送ってください。打ち合わせを行った…

2

ぐるっと車を回った。車越しに薬師丸が時々映るもレンズの焦点は車に合わせた。そこに人がいる、話しかけないのであれば、その程度の認識で十分事足りる。 ツーシーター、後部座席はない。すると後部座席を要する車はツードアと呼ばれるのか、それではフォー…

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「発売前に外装を知られては販売実数が伸び悩む、ということでしょうか」アイラ・クズミは尋ねた。 スーツを着た人物が助手席を下りる、アイラは視線の先を覆いがかかる小型車のフォルムに戻す。「よく私どもの事情を知っておられるようですね」きっちり分か…

K国際空港二階 出発ロビー 60番ゲート前

あの稚拙な言葉遣いはどこで覚えたのか、搾り出した末の発言に聞こえた。気負いを削ぐと残り現れる像である。開け放たれたドアの戻りを手で支えた、私の居場所、閉ざされてなるものか。剥奪権を譲り渡す、そう受け取れたら考えを改めるか。いや、私は普遍的…

K国際空港二階 出発ロビー 60番ゲート前 

miyako、とその女性は名乗った。頭にサングラスを引き上げて待機。自分にはまったく見えていないのに、どうにもサングラスの誤解された使い方に海外の視点どのように捉えるのだろう、アイラは海外のすし屋を見ているようでならない。 miyakoはとても一方的で…

K国際空港二階 出発ロビー 60番ゲート前

「こんにちは。アイラさん、だよね?」確かめるような口ぶり、視界の左端に女性が顔を屈めて立つ。長いコートを羽織る、毛量の多い痛んだ髪、何者であるかはアイラが知るはずもない、彼女は人の名前を覚えない。「はい」そっけなく答えた、いつもの口ぶり。…