コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 3

なになに?君の文章が気に食わない、肌に合わない、読んでいられない、さっさと要件を言えって、手厳しいじゃない。 ふう。よく言われるのよ、話が長いってさ。自覚症状はこれでもあるんだから、まあ……威張って言うことでもないか。 二枚目の紙に及ぶのは控…

黄色は酸味、橙ときに甘味 3

不破は諦めを思わせる両手を、上に向けた。割と腕は短いらしい。彼は上着の内ポケットを探った。手紙である。紙はビニールに内部にしまわれる。家庭用のジッパーが付いた袋よりも薄手だった。彼が手渡す。 アイラは彼を射抜くように見つめ、それから内容に目…

黄色は酸味、橙ときに甘味 3 

「お取り込み中のところ、おほん、申し訳ない」 「過度な礼節は必要ありません、どうか気遣いの文字数を質問に変えてくださるとありがたい」ステージの手前でぴたり止まる、刑事の不破は足をかけるのを躊躇った。好意的に受け入れてもらえる彼自身の予測を、…

黄色は酸味、橙ときに甘味 3

私は黒の洋服を着る、多少袖をまくる。椅子に座っていた。しっとり、ふうわりとした印象をかもし出す曲であるならば、うん、着席もありかもしれない。お客が左右に首を振る。ゆらゆらとたいまつがあれば、より私を照らす明かりが散乱、光と影のランダムな動…

黄色は酸味、橙ときに甘味 3

不本意な眼差しでカラドが見せるディスプレイにはアイラの演奏風景画が十枚以上確認できた。念のため、すべてのメモリーカードをカワニと市役所の担当者が調べた、各自の端末に差込み、確認。ここで十分の時間を無駄に垂れ流す、そう自覚したアイラだった。 …

洗濯物はたたまない!洗濯かごを使った洗濯収納!

https://cdn.pixabay.com/photo/2016/10/02/17/31/basket-1710064_960_720.png 「洗濯物がどんどんが溜まっていく」「頭ではわかっているけど、疲れていて重い腰が上がらない」 いつかは先延ばしになって、いよいよという時を迎えてようやく洗濯に取り掛かる…

黄色は酸味、橙ときに甘味 3

史実家の男は自らの犯した行動違反が理解にすらあがらない。欲の追求、使命感に燃えるがあまり、狭まった視野が落ち度を見逃し、岸壁を転がり落ちてしまう。 「……写真を撮っていただけですけれど」史実家の男は不都合でもありまたしか、表情を読み取る限り、…

黄色は酸味、橙ときに甘味 3

散々。 東南アジアの仏閣を思わせる石造りの建物にもう一つ、南米の遺跡に立つ神殿と開けた土地に生える一面の短い草が印象的。カワニの行動力は底が知れない、管理側の県か市が提案を持ちかけたのかも。歴史的な建造物であることは、侵入を拒んだ敷地を隔て…

黄色は酸味、橙ときに甘味 2

最寄り駅はかろうじて新幹線の停車駅に選出された引きの強い駅。 汗を掻いた彼女の額が窓に映る、車内。 ふう、と呼吸を整える。何とか、出発の時刻の二分前に飛び乗った。駅弁を選んでいたのがいけない。ついつい一人だと贅沢をしてしまう私になびきそうに…

黄色は酸味、橙ときに甘味 2

水曜日に手紙を開封した。夫と子供の手前、そうやすやすと家を空ける時間、これを手に入れる瞬間は神様の啓示みたいに突如として目の前に、それこそ懸賞の当選みたいにインターフォンを鳴らしては、やあやあと配達員たちと二人掛かりで、にこやかに配送品の…

黄色は酸味、橙ときに甘味 1

車はそれから数十分走り、インターを降りた。凱旋よりかは、ふりだしに戻った感覚である。見覚えのある景色が、迫る。 「お昼はどこかで食べますか、それとも……」私はカワニを遮った。 「会場に入ります」 「そうですよね、じゃあコンビニによります。食料を…

黄色は酸味、橙ときに甘味 1

「……あたた」 「衣装は特段、三つの選択肢をもうける必然性は絶対ではないの」アイラは衣装を毎回東京に持ち帰り、一公演ごとに三着の衣装をそろえるアキの東京・九州間の往復の所業に呆れていた。プロフェッショナルといえば、彼女の仕事振りは理想追及の完…

黄色は酸味、橙ときに甘味 1

「なるほど、無視ですか、ひさしぶりの感触では、あるか、うん」 カワニの呟きを取り入れつつも応えるつもりはなかった。 スポーツ誌を捲ってアイラは目的の記事を探す。 写真が掲載されていた、記念館の表口である。アングルは入り口を真横側面から映したと…

黄色は酸味、橙ときに甘味 1

(備考)田端ミキの遺体は遺族に引き渡され、十八日に告別式が行われる。 場所 熊本興行センター 時間 午後五時』 一紙を閉じた。新聞を交換。 スポーツ誌のカラフルな紙面は手を載せていると色が移りそう。膝に乗せた次の一紙はしばらく開かなかった。 警察が…

黄色は酸味、橙ときに甘味 1

ミラーを見ながらカワニが問いかけた。ここまで黙りっぱなしの私になにか話しかけるきっかけが欲しかったらしい。無言の車内を彼は嫌う、というよりも堪えられないのだろう。待機状態の違いがもたらす、定常の据わりが彼にとって討論に寄った着地の見えない…

黄色は酸味、橙ときに甘味  1

イレギュラーに開催地をニ箇所、十月第三週は廻った。 火曜日に鹿児島県で開催、木曜日は二箇所目の宮崎県へ飛び、お客と対面を果たした。どちらも、かつての近代日本を支えた商業会館であったらしい。 アイラ・クズミは詳しい建物の歴史に興味を示す余裕が…

本心は朧、実態は青緑 7

アルコールが飲めたら、と思う。 嘘。 不快たちがはびこってしかたない。 月を眺めて、綺麗とつぶやく。観測者たちは淡々と記録をつける。私はそのどちらでもない立場を好む。どちらへも行ける。まず私は覗き込むレンズを丹念に磨くのだ。 手紙の内容を思い…

本心は朧、実態は青緑 7

「不当な拘束に対する保障が与えられないことに不満を抱いている。事務所スタッフの方たちは一泊の滞在を余儀なくされた。余分な経費は警察が請け負ってくれず、こちらが負担する。いくら会場の外で人が亡くなり、前週はライブ会場で死体が発見されていても…

本心は朧、実態は青緑 7

途切れたアキと不破の会話を長尺の長考が予見されるも、颯爽とアイラがそれを引き継いだ。 唇の収斂、アキは、降りかかる予見される影響がよぎったのだろう。彼女は個人事業者、睨まれたら最後、仕事の供給はストップしてしまう懸念が終始付きまとう。……どこ…

本心は朧、実態は青緑 7

「ナイフで殺人を犯す、実行にはハンデが伴いますでしょう。が、制約を抱えた人たち、私たちを集め、あなたは疑いをかけています。裏を返すとそれは、私たちへの疑いを強く信じられる、私たちの知らない証拠があると検討がつく。屋外での犯行、目撃者は今の…

本心は朧、実態は青緑 7

「ええ、産業会館のような催し、興行向けに一階ロビーを貸しきったはずです」カワニはショルダータイプに変形したバッグから手帳を取り出す、分厚く、カラフルな付箋が飛び出す、傍目に許容量は越えている。「……あったぞう、やはり、事前に私、調べてありま…

本心は朧、実態は青緑 7

「最終便の出発は午後八時四十分。諦めてください」 「私たちは教会の、あそこの、出入り口にいました」 向日が座ると、隣の楠井がバトンを受け取り、話す。 彼女はドアを指し示す、ひかりで指輪が知れた。 「アイラさんのライブ終了は不規則です。予定表ど…

本心は朧、実態は青緑 7

むやみに無許可で溜まってしまう、忘れることができない、常に並列した記憶が堆積。私がおかれた生活状態がこれで少しは想像できただろう。 人は誰しもが、皆すべてをこれまでを覚えているものだと思い込んだ時期が懐かしい……、アイラは教会に意識を戻した。…

本心は朧、実態は青緑 7

「目撃者は、犯人を見てはいないのですか?」アイラは目を開けてきく。 付け加えるように土井が口元に手を当てて、内緒話を伝える仕草でしゃべる、忘れていたことを伝えたらしい。しかし、不破の一瞥が彼に飛んで、萎縮。体格に不釣合いな格好、でっぱるお腹…

本心は朧、実態は青緑 7

不破が応えた。「お答えする前に、まず皆さんの行動を再検討させてください。見落とした点や、思い込みによってついた虚言が含まれているかもしれませんし」 「あのう、私たちって、その、ここにいなくてはいけませんか?」事務所のスタッフ、ショートヘア、…

本心は朧、実態は青緑 7

土井がいそいそとドアを閉めた。カワニが振り返る、アキは発覚を恐れるような動作で端末を肩にかかるショルダーバッグにしまう。飛び出す化粧用のペンシルにコーム、櫛。彼女はヘアメイクもこなす総合的なスタイリストである。洋服のみのスタイリングも世間…

本心は朧、実態は青緑 7

午後九時。教会内のステージの撤廃が許可された、鑑識の入念な捜査を受けた機材とそのスタッフたちが三十分という短時間で機材をまとめて退出していった、目の前をがらがら、台車の手を借りてしまえば、あっという間の一往復きっかりに、最前列を狭める数々…

本心は朧、実態は青緑 6

約一時間、片足立ち、ときに壁に寄り沿っては靴底を壁に押し付け、警察、主に鑑識の手際にアイラは見入った。カワニが汗だくで駆け寄り、姿をみせたときは夕暮れがひたひたと距離を詰める時間帯だった。観客たちはカワニが飛び出して三十分ほどで会場を出た…

本心は朧、実態は青緑 6

「死体のようです」アイラは片目を閉じて、そっけなく応える。「お客の搬出はどうします、警察の車両は一応、交通規制を装うよう提案された方が、後々世間に広まる情報の食い止めにはなります、私のライブとの関係性をつなぎあわせたくないのであれば」 「刑…

本心は朧、実態は青緑 6

「中に観客がいます。拘束されては困ります」 「状況次第ですね、それは。まだ、なんともいえません」 「なにがあったのです?」アイラは興味を装って訊いた。 「殺人です。阿倍記念館と同一の事件が教会で起きた、と匿名の通報があったのですよ」 アイラと…